My lover. | ナノ



アゲイン?現れた相手

■ ■ ■


「君が、雲雀恭弥のお気に入りですか」


「……は?」

 風邪も治って無事登校、久々に並中の校門を通ろうとしたところで――がしっと肩を掴まれた。
 どうやら登校再開初日に、厄介な輩に絡まれてしまったらしい。髪型から厄介そうだし。

「誰が厄介そうな髪型ですか」
「えっ、今俺声に出てた?」
「顔が全面的に語っていました」

 嫌そうに顔をしかめた相手が、急に郁の顎を掬う。

「?!」
「ふむ。……雲雀恭弥の好みがわからないので何とも言えませんが、確かに整った顔はしていますね」
「ああそうですか。……ところで放して頂けませんか」

 どこから突っ込んでいいのかわからないが、とりあえず身の安全は確保したい、と郁は思った。はりきって早く登校しすぎてしまったのが災いか、周囲には人気がない。つまり、自分でなんとかするしかない。

「そうですねぇ」

 クフフ、と奇妙な笑い方をした相手は、放すどころかさらに顎を強く掴む。

「っ、はな――」

 せ、と言う前に、強引に頭の後ろを引き寄せられた。





「っ、なっ、!」
「おっと」

 とっさに突き飛ばす。だが相手は大してよろめきもせず、むしろ郁の方がたたらを踏んで後ろへ体が傾いた。

「危ないですね」

 だが完全に倒れ込むその前に、背中に腕を回され支えられる。

「な、……なんなんだ、あんた」
「僕は六道骸といいます。君は何と言うのですか?」

 わけがわからず、とにかく唇をこすり離れようとする郁に、しかし奇妙な髪型の相手は、ただ笑むだけで腕を離す気配もない。

「言いませんよ。他校の、それもいきなりキ……意味不明な事してくるような相手に」
「それは残念だ。……ですが、彼が教えてくれるでしょう」
「?かれ、って――」

 だれ、と言い終えるその前に、

 真上でヒュンッ、と鋭い音がした。




「はっ?!」
「おっと、……相変わらず物騒だ」
「ねえ」

 骸に襟首を引っ張られ、ギリギリで避けた郁の真ん前でアスファルトがへこむ。
 べこっと派手な音を立てて沈んだ円形に、郁は冷や汗がこめかみをつたうのを感じた。――何これ怖すぎ、笑えない。

「何しに来たの、六道骸。あと佐藤郁を今すぐ離せ」
「佐藤郁、というのですね」

 殺気立つ雲雀に構いもせず、骸は呆然としている郁を抱き寄せる。

「は?ちょっ、おま」
「佐藤郁、また会いましょう」

 ふざけんな誰が二度と会うか――言いかけ開いた唇が、突然塞がれる。


「ッ、死ね!」
「ではまた、雲雀恭弥」


 突如唇を離され、郁はどさっと尻餅をつく。
 空を切り裂いたトンファーは、消えゆく藍色の残滓に突き刺さりーーただ、鋭い金属音だけをかき鳴らした。



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