戦闘の前触れ
「さてと、これからどうしよっかー」
正義いちおしのお好み焼き屋を出て、しばらく。
ファイは腰に手を当て、へらりとした笑みを浮かべた。
「もう少しこのあたりを探してみようと思います」
「おっけーおっけー、小狼が言うなら是非とも!」
「え、あ、はい……」
口を開いた小狼に、ずいっと顔を近づけ目をきらきらさせる瑠依。
思わずのけぞった小狼を横目に、黒鋼が呆れ顔をする。
「お前、妙にそのガキに絡むな」
「だって小狼、超絶可愛いし!」
「か、かわ……?!」
「あ、もちろんかっこよくもあるよ?安心して!」
目をぱちぱちさせる小狼も、良くも悪くも瑠依の異常な言動に慣れてきたようだ。
にっ、と目の前で笑う少年に、引きもせず「瑠依さんって面白いですね」と困ったように苦笑を見せる。
黒鋼は「どこをどう安心材料にすんだ」とため息混じりにバッサリ切り捨てたが、瑠依は眼前で笑う小狼に、満足げな表情を浮かべた。
「……そういえば、皆さんはどこか行かれるんですか?」
なし崩し的に付いてきていた正義が、会話を聞いてふと首をかしげる。
それに、はい、と小狼が答えた。
「探している物があって……」
「えっ、だったら僕も一緒に探します!」
「でも御迷惑じゃ……」
「全然!」
一瞬で明るい顔になった彼は、「家に電話します!待っててくださいねー」とすぐさま駆け出していった。
「ほんとに憧れなんだねえ」
遠ざかる背中を見ていたファイが、小狼に笑いかける。
「そりゃあこんなかっこかわいい子を前に、憧れの情のひとつも抱かないわけがない!」
「てめぇが言うと台無しさ加減が増すのはなんでだろうな……」
「なんだと黒!」
「はいはーい、静かにしようねー」
最早デフォルトと化した小煩い騒ぎが始まった、
それと、ほぼ同時。
「『シャオラン』と『ルイ』ってのは誰だ?!」
まるで見計らったかのように、大きなダミ声が響き渡った。