朱に染まる水平線
海へと沈みかけている太陽は真っ赤で燃えるように赤い。それが反射していつもは青い海は赤く染まっていた。僕は水泳部の先輩である海里先輩と一緒に海に来ていた。来ていたというよりはたまたま道端でばったり会って、これから海を見に行くんだけど一緒にどう?なんて聞かれたのでご一緒させてもらったのだ。海に行くまでの間、部活のことや泳ぎのフォームについてなど色々と話をした。先輩の話は面白くて聞き入ってしまう。そして、聞き上手でもある先輩は僕の理論に基づく最適な泳ぎのフォームについても頷き、たまに理解できなかったのか詳しく尋ねてくれた。
そして、海に着き、堤防の所に海里先輩は座るので僕も隣に座った。
「いやーやっぱり夕日が海に反射していて綺麗だね」
「そうですね」
足をぶらぶらとさせ、炎みたいに赤い海を眺める先輩の頬も海の反射のせいかほんのりと赤に染まっていた。また水泳の話を始めた先輩は本当に泳ぐことが好きなんだろう。七瀬先輩と同じですぐ脱いで泳ごうとするところや泳ぐときの綺麗さも似ている。でも僕は七瀬先輩の泳ぎも好きだが、それ以上に海里先輩の泳ぎがなによりも好きだ。
彼女の泳ぎはまるで水を得た魚のようだった。すいすいと気持ちよさそうに、人魚のように泳ぐ姿が何よりも美しい。そんな先輩が今僕の横で夕日のせいだとしても頬を染めている。それが僕をなんとも言えない気持ちにさせた。
「そういえばもう部には慣れた?」
「まぁはい。みなさん良い方々ですので」
「それは私も含めていいのかな?」
「もちろんです!」
そっか、ありがとうといつもの笑顔で言われた。それからまた水泳の話だったり、陸上のことだったり色々と話す。やっぱり先輩は相変わらず聞き上手だし、話し上手だった。
気が付くと夕日はもうあと少しで全て海に飲み込まれそうというところまできていて、その海にはしるまっすぐな赤い水平線がなんだか幻想的に思えた。海里先輩も同じ気持ちだったのかこちらを見て、綺麗だねと一言。その時の微笑みが僕が生きてきた中で一番美しい微笑みだと感じた。
今度はみんなで一緒に見に行こうよと言う先輩に、僕はそれはいい考えですねと言った。だけど、本当は今度も一緒に見に来たい。それを言ったら先輩はどんな顔をするのだろうか。