裸足で駆けるきみ
何処までも続く雲一つない青い空、何処までも続く太陽の反射で煌めく青い海。砂は白くはないし星の砂として売ってるやつには程遠いけどサラサラして綺麗だ。
ハルと同じように水が大好きな海里は、海に来たとたん脱ぎ始めて泳ごうとする。ただ水着を下に着ていなかったみたいで、ブラウスを脱ぐ所で止まってくれた。水があるところならどこでも脱ぐ癖はハルとおんなじ。それを止めるのは俺の役目でもある。
「まこちゃーん!」
足首ぐらいまで海に浸けている海里が俺に向かって手を振る。それに振り返す。バシャバシャと音を発てながら、足で海水を蹴りあげる姿は泳いでいるときほどではないけど、とても楽しそうだ。
「まこちゃんもこっちきて!!」
「俺も?」
「そう!」
早く早くと手を招きながら、俺を呼ぶ彼女の一緒に海で遊びたいという声に応えて、波打ち際まで向かう。波が来ないぐらいの場所に靴や靴下を脱いで置いておく。ズボンを膝上まで捲る。
そして、海の中に足を浸ける。次の瞬間、
「えいっ!!」
「うわっっ」
顔に向かって海水をかけられた。もちろん洋服にもかかって濡れる。ケラケラと笑いながら、どんどんかけてくる。まこちゃん、びしょ濡れじゃん!なんて誰がやったのかわかっていながら言ってくる彼女に、俺は仕返しにとばかりに水をかけた。
そしたら思いの外、力を入れて海水を海里にかけてしまったらしく、俺以上に上から下まで濡れてしまった。
ピタッと動かなくなった彼女に怒ったかなと思ったがケラケラと笑っていながら、
「ぐしょぐしょに濡れた!でも夏だからすぐ乾くはず!というわけで、まこちゃんも私以上に濡れちゃえ!!」
と言って、さっきより勢いよく水をかけてくる。バシャン!と大きな音をたてながら俺の顔面に思いっきり当たった。近距離からのそれを避けることはできない。彼女より濡れてしまった。いくら夏でもこれは乾くか微妙なところだ。
俺が動かないから怒ったと勘違いした海里は「ごめんなさーい!!」といいながら逃げた。水滴が真っ黒い髪についていて、それが太陽の反射で煌めく。泳いでいるわけではないが、楽しそうに海辺を走る彼女にもう一度仕返しをすべく、俺は追いかける。