04兄視点ここ最近、否、だいぶ前から妹――明良――が眠れていないことに気付いた。目の下に隈がうっすらと出来ている上に、顔色も少し悪いことが多くなった。顔色が良い日なんて、ほとんどない。
明良が眠れないことは昔からあった。でも前はそこまで酷くなかった。アイツが中学に入ったぐらいから少しずつ、少しずつ、今みたいに眠れない頻度が増えた。寝ても、唸っていたり、声を上げて起きたりしていた。一度物凄い叫びを上げたときは何かあったのかと思い部屋に駆け込むと真っ青な顔の妹がいた。その時もそうだが、明良は基本的に大丈夫かと聞くと必ず大丈夫だとしか答えない。
最初は学校でいじめられてんじゃねぇかって考えたけど、俺の妹はいじめを受けたらそれ相応の準備をしてから迎え撃てと今はもういない爺さんに教えられてきたからないだろう。あとアイツの友達と俺の後輩にも聞いたがいじめなんてなく、クラスでは中立の立場で問題なく過ごしているらしい。俺がこの目で見たわけではないし、もしかしたらそいつらが嘘を吐いてるかもしれない。でも、きっとそんな単純なことではないもっと別のことでアイツは苦しんでる気がした。
今夜も声を軽くかけて部屋に入ったら、ベッドで本を読んでいた。眠そうな顔をしているが、眠れないというような雰囲気だった。
少しでも気分転換になればいいと思い、外へ連れ出した。向かった先は前からつるんでいた同級生である草薙出雲の叔父の店。まぁ実質は出雲がやってるようなものだけど。
そこで多々良が持ち前のコミュニケーションで妹に絡んだ。明良は少し戸惑っていたが、少し笑顔で握手していた。しかし、その瞬間、妹はフラッとして倒れそうになる。それを慌てて支えようとしたら、さっきまでいなかった尊がいつの間にかいて、支えた。
「おい、こいつ誰だ」
「俺の妹」
「そないことより、どこかに横にさせへんと」
「そうだな」
心配そうに多々良がソファに横になった妹を見詰める。眉間に皺を寄せて小さな声で唸る明良が少しでも安心できるように、俺は手を握った。