02最近、寝れないというより眠れない。寝たとしても、眠った気持ちにならないし、身体も疲れる。原因は多分、ここずっと見ている、誰かが死んだり、誰かが悲しむ夢。どこかで見たことがある気がする夢。でも、どこでいつ見たのかを思い出せない。
あの夢はどこか現実感がなくて、でもとてもリアルで鮮明であそこが現実の世界でここが夢の世界なんじゃないかと思わせるぐらいだった。
夢の中で夢だと気付くことはめったにない。夢の中ではそこが現実世界となる。そして夢から覚めるとあの現実世界だと思っていたのは夢だったのかと認識する。しかし、あれはそんな生易しいものじゃなかった。起きてもあの夢での気持ちや感覚は消えない。そういった夢もあるのかもしれないが、それにしては頻度が高すぎた。わけがわからない。眠いのに寝るのが怖い。そんな毎日。
「明良」
「なに?なんかあったの?」
部屋で本――主人公が未来を変えるために奮闘する物語――を読んでいると、お兄ちゃんが声をかけてきた。それに答えると、彼は眉間に皺を寄せて私を見た。
「今から出掛けるぞ」
「え?」
「早く準備しろよ!俺は玄関で待ってるから」
そう言って、部屋から出ていった兄をポカンと見つめながら、どうせ眠れないから着いていくことにした。寝間着から七分丈のシャツ、短パン、上着を羽織り、ニーソを履いて玄関口に行く。髪はめんどくさいから下ろしたままでいいや。というかこの格好も出かけるべき格好じゃない。でも、気合入れるようなとこに行くわけではないと思うから、これでも別に問題はないはず。
適当に準備をして玄関に行くとお兄ちゃんはすでに準備を終えて待っていた。時期は秋で、少し夏の暑さが残っているからか兄の格好は私の格好よりかは涼しげだった。
「お兄ちゃん、どこに行くの?」
「気晴らしできるとこ」
そう言って危ないからと私の手を握りながら私の一歩先を歩くお兄ちゃん。冷え性の私からすれば兄のあたたかい手でぬくもりを堪能しなが後に続いた。そして、暗いけどちょいちょい星が見える空の下を迷いなく進んでいく兄の背を見つめながら着いていった先にあったのは、こじんまりした、
「カフェ?バー?」
カフェなのかバーなのかわからない“HOMRA”と看板がある店。そのまま、お店の中に入っていった兄を追いかけて私も入り込んだ。