08

あれから、私はちょくちょくお兄ちゃんについていってHOMRAに顔を出している。
未来を変えるためには細かい現在の状況も知っておく必要がある。いつ話が始まるのかはなんとなく分かっている。でも異分子である私がいるからどうなるかわからない。だから、こうやって遊びに行っている。

それを抜きにしても彼らと共に過ごすことは同級生といるときより落ち着く。まるで私が最初からここの仲間と錯覚してしまうぐらい。


「明良ちゃん、明良ちゃん」
「多々良君どうしたの?」
「じゃーん!アップルパイ作ってみたんだ」


カウンター席に座って出雲さんと話していたら名前を呼ばれる。振り向くと十束君が美味しそうなアップルパイを持ってた。お店に出てきそうなぐらい綺麗。
たくさん趣味のあるというかとにかく色んなことに挑戦する彼は、よく私に覚えたことを披露しくれくる。兄や出雲さんとあの赤い人、尊さんに披露してもあまり反応が薄いから私に披露してくれるんだと思う。


「美味しそうなアップルパイだね」
「明良ちゃんが好きって聞いて、作ってみたんだ」
「た、食べてみてもいい…?」
「そのために作ったんだからどうぞ」


作った本人からの許可を得たので、出雲さんがいつの間にか用意してくれたフォークを使って食べてみる。
周りはサクッとしていて、中身はしっとりとりんごの甘酸っぱさとシナモンの味がして美味しい。これはお店出してもいいぐらい。

美味しすぎて気が付いたら、半ホール食べていた。食べ過ぎた。


「明良ちゃんはほんま美味しそうに食べるな」
「だって美味しいから仕方がないんです」
「俺も作った甲斐があるよ」
「こいつからアップルパイ奪ったら多分尊でもぶっ飛ばすぐらいの勢いで殴られる」


いらないことを言うお兄ちゃんの口にアップルパイ一切れまるまるぶちこんだら多々良君はもちろん、出雲さん、そしてたまたまこちらを眺めてた尊さんも(小さくだけど)笑ってた。


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