05

「ねぇ、おかあーさん」
「どうしたの?」


私がまだ幼稚園に入ったばかりの頃、ふと夢で見たことを母親に話してみたことがあった。そのときは、ただ、お母さんと話すためのきっかけにしようとしただけだった。あと、その夢で見たような場面にいたからというのもあった。今日は同じ組のあの子と遊んだんだよと何気ない話のように私は話した。


「あの女の人ね、もうすぐ車にひかれちゃうよ」
「え?」


お母さんが私の指した先を見た次の瞬間、女性が信号無視をした車にはねられた。母親は私の目を咄嗟に塞いだ。少ししてから、私の手をひいて家へと帰った。去り際に誰かが叫ぶ声と、救急車の音が聞こえた。
家に帰ってすぐに、お母さんは私の方を見て、尋ねた。


「明良、何であの女性が車に轢かれちゃうってわかったの?」
「夢の中でね、わたしとお母さんがお買い物しててね、その帰りに女の人がひかれちゃうってなったんだよ」


見たままのことを正直に話したら、お母さんは私を抱き締めてきた。それから、私にこの夢で見たことは誰にも言っちゃいけないと言われた。そのときの彼女の姿は、どこかで見たことが―――










「×××、いいですね?」
「うん」


小さい頃から夢を見た。

悪い夢は話せば正夢じゃなくなると聞いた。だから怖い夢を見て母親に言った。そしたらそれと同じことが起きて、彼女は、どんな顔をしてたっけ…?多分、驚いたような、何か恐ろしいものを見るかのような顔だった気がする。
この時から私は祖母の家に預けられた。そこで祖母に、夢で見たことは誰にも話してはいけないとキツく言われた。



それから幾年も経って、私は大人の一歩手前ぐらいの年になり、普通に友達もできて、普通に楽しい生活を送っていた。


「×××ちゃん!」
「おはよう、どうしたの?」


友人がおはようと返しながら私の前にある席に座って、深刻そうな顔をした。


「聞いてよ!こないだ好きなアニメの最終回だったんだけど、そこで一番好きなキャラが*んじゃったんだよ!?」


うわぁぁぁぁぁあああ!×××さぁぁぁぁんんん!!と叫ぶ彼女。しかし、その人物の名前とどうなったかがよく聞こえなかった。また他の誰かが最初の方でこうなって、最後で先に言った誰か以外がこうなる等と話してくれた。でも肝心な名前と内容がわからない。


「×××ちゃん聞いてる?」


そういえば、さっきから私の名前を呼ぶ声だけ何故かうまく聞き取れない。どうしてだろう?



「―――明良ちゃん」


少年のような声が私の名前を呼ぶ。あぁ、これは、あの既視感は――

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