真珠の子供が泣いている
ジャーファル視点
「まだ目覚めないのか?」
「はい。侍医によると、もう目覚めてもおかしくはないみたいですが、まだ目覚めません」


シンドリア王国の王であるシンは、彼にしては珍しく真面目に執務をしていた。その横では政務官である私が書類を運んだりシンが逃げ出さないように見張ったりしている。いつもは私が目を離した隙にどこかに行ってしまわれるのに、珍しい。

あの幼子が気になるのか、いつになく真剣な顔だった。


「何故、あんな場所にいたんだろうな」
「暗殺者にしては、武器を一切持ってませんでしたし、服装もこの国では見ないものでした」


あの幼児を拾ってから数日が経過したが、未だに目覚める様子はない。

暗殺者かと最初は疑ったが、殺せるような武器は一切なく、ただの幼児だった。まだ寝てはいる、あの幼児を見ている限り暗殺者ではないことがわかった。しかし、それでも警戒をしとくに越したことはない。なので一応は警戒して兵をつけている。

私達が未開の場で見つけた幼児について話していると、扉を急いで叩く音が聞こえた。それに返事をすると王の部屋に相応しい扉が慌てて開く。そのとき、どこからか、子供の泣き声が聞こえた気がした。


「失礼します!!」
「どうかしましたか?」
「寝ていた幼児が目覚めたのですが、パニックになっているのか、暴れて泣き叫んでいて…!」


今、侍女達が宥めようとしてます、と幼児の見張りにつけていた兵が急ぎ足で事を伝える。なるほど、聞こえた気がしたのは気のせいではなかったというわけか。

それを聞いたシンは直ぐ様立ち上がり、執務室を出ていってしまったので、私も急いで彼を追いかけて、あの幼児の元へかけた。

title:カカリア

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