子猫じゃらし王であるシンが逃げ出さないように監視していたが、隙をついて逃げられた。どうしたものかと考えていたら、コンコンと扉を叩く音がしたので入るよう言って入ってきたのは、
。
「ジャーファルお兄さん見て!」
シンドリアで保護をした少女みたいに可愛らしい少年――カナン――で、パタパタと小さな歩幅で走ってきた。
しかし、いつもと違う姿に私は驚いてしまった。それはもう、持っていた巻物を落としてしまうぐらいに。
「にゃんこさんの耳生えたー!」
満面の笑みと言ってもいいほどの太陽みたいに明るい笑顔で聞かれて、私が疲れているせいで目が可笑しくなったからではないことがわかった。
私は目を擦ってもう一度、猫耳の生えた彼を見て、どうしてこうなったのかを尋ねる。
「カナン君、どうしてうなったのかわかりますか?」
「うーんと…うーん……」
うんうんと唸って考え込んでいるカナンに、多分わからないのだろうなと結論付けた私は彼を眺める。
本人の意思で動いているような尻尾はゆらゆらと揺れていて、耳もピクピクとしている。毛の色は髪と同じで、深い海みたいな毛色をしている。そのフワフワと柔らかそうなそれを見ていると、なんだか撫でたくなり、つい彼の頭に置いてしまった。
「うにゃ?」
「ふわふわですね」
耳辺りを撫でると気持ち良さそうにに目を閉じるカナン。自分からすりすりとしてくる姿にとても癒されるのを感じた。
その後、どこからかカナンに猫耳が生えたことを聞き付けたシンが帰ってくるまで、この癒しを堪能し続けた。
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