ほら、ヒーローが来たよぼくとふわふわのしっぽの子を食べようと大きな鳥さんがどんどん近付いてきて、ぼくはもう食べられてしまうんだ、って思ってぎゅっと目をつむった。冒険は生死にかかわるものだって本に書いてあったけど、本当だったんだ。冒険をしてたぼくはここで死んじゃうんだ。もう、ダメだって思ってぼくの体と動物さんをぎゅって抱きしめた。
でもいつまで経っても食べられる感じがしない。痛いのもこない。なんでだろうと思って、そっと目を開けたら、夕日よりきれいで真っ赤な色のした髪の毛のおっきな人が立っていた。
えっと、たしか、
「マスルールお兄さん…?」
マスルールお兄さんは鳥さんの足をガッシリと掴んでいて、鳥さんは逆さまで暴れながらブラブラしている。堅そうなくちばしがお兄さんの身体に当たりそうで当たらない。当たったら危ないのに、お兄さんは平気そうな顔で鳥さんのことをじっと見たあとぼくの方を見た。
「あの…えっと……その…」
お兄さんがぼくの方をジッと見ている。身体がおっきいからちょっぴり怖いけど、助けてもらったんだからお礼はちゃんと言わないとダメだって、誰かが言ってた。誰だったか忘れちゃったけど。
「た、助けてくれて、ありがとうございます…」
ペコッっておじぎしたら、大きな手で頭をポンと置いて、わしゃわしゃと髪がボサボサになるぐらい撫でられた。髪の毛がぼさぼさになっちゃったけど、なでられるのは好きだからいいや。えへへって笑ったらマスルールお兄さんもフッって口元と目元をゆるめて笑ってくれた。