※ギャグです。
※なんでも許せる人向け
「いいから黙って魔法少女にならんかァァァ!!!」
「いやだああああ!!!」
帽子を被ったかっこいいお兄さんに唐突に声をかけられたかと思えば、マルチとかではなくてそれ以上にやばいことを言われた。
“魔法少女になれ”
某アニメでは小さなマスコットキャラが言う台詞なのに、なんでこのお兄さんなんだ。
しかもそんな事言われてもこちとら15歳だぞ。ニチアサの小さい女の子に人気のアニメだったらおばさん扱いされる年齢なんだぞ。
始めは人違いですとか、すみません、よく分かりませんとかでやんわりと避けようとしたのにも関わらず、私が魔法少女になる事を承諾しないから堪忍袋の緒が切れたのか叫んできた。
当然驚いた私は逃げ出して、この有様となる。
「捕まえたぞ!」
普段運動することもあまり無い私が、バリバリスポーツしてそうなお兄さんに勝てるはずもなくあっけなく捕まる。しかも中々に迫真の表情をしていらっしゃるので、さながら売上柄伸びず必死になる営業マンのようだ。怖い。
しかも掴まれてる手首が痛いのなんの!
「いでで!痛い!!です!!!…いきなり!……はぁ…はぁ…魔法少女って、なんなんですか!!!?」
「前世の貴様の行いの悪さを反省せんか!!」
「は?」
またもや意味不明なキーワードを発言した黒帽子のお兄さん。
前世?行いの悪さ?頭大丈夫かこの人……。
「ダメだよ、真田。きちんと1から説明してあげないと」
「ゆ、幸村!?いつの間に…」
「誰、ですか?」
本当に唐突に現れたから気づかなかった。この人達本当に人間かよ。
中性的な整った顔立ちの方のお兄さんは、優しく微笑みながら私を落ち着かせる。
「はじめまして、俺は幸村。君に声をかけたのが真田だよ」
「はぁ…初めまして。名字です。…あの、幸村さん、真田さんの説明がさっぱり分からないんですが……」
「すまなかったね。真田、彼女の手を離してあげてくれ」
「あ、ああ、すまない」
こんだけ気迫ある人をたった一言で従わせるなんて、この人本当に人間か(2回目)
「とても信じられる話ではないと思うけど、よく聞いてほしい」
「はい」
「君は前世、極悪人だった」
「……え???」
「どうしてそれが分かったのかは中略するけれど、君はその償いを今世でしなくてはいけないんだ」
1番気になるところを省略された気もするが、彼の意見を素直に聞いておくべきだと第六感が騒いでいる気がするので、止めておこう。
「そうだ、名字、お前は……お前は立海の魔法少女になれ…!」
「そんな、越前、お前は…お前は青学の柱になれ…!みたいに言われても」
「真田。そこまで必死にならなくても、彼女は魔法少女になるから大丈夫だよ」
「え、まだ私何も言ってな」
「いいのかい?君のアカウントが晒されても……」
「そ、それは……!」
私のコスプレアカウントじゃね〜かぁ〜〜!!!!
ギャグ漫画日和のツッコミの如くとんでもない表情をしながら、幸村さんの携帯を取り上げようと手をかざすが、何故か身体が動かなくなった。
「イップス…!」
「ゆ、幸村…イップスはテニスをしなければ発動しなかっのでは…?」
「真田、細かいことは気にするな。それより、魔法少女になる気にはなってくれたかな?」
「なりますから!!!!そのアカウント真田さんにも見せるのやめてください!!!!!」
化粧する前と後では劇的ビフォーアフター並に顔が違うってのに、特定されるなんて怖すぎる。しかもフォトショ加工ありだぞ。
半分強制的に魔法少女にならざるを得なかった私は、泣く泣く幸村さんと交渉を平和的に(?)終わらせた。
「流石幸村だな。それで、何故彼女はこの写真に写っている髪色鮮やかなたまらん美少女を知られたくなさそうにしているんだ?」
あ、これ同一人物だと思ってないやつじゃん。地味に傷つく。
「真田は相当名字さんのことが好きなんだね」
「な!何を言っているのだ幸村!」
コスプレした私を目の前にいる私だと気づかない真田さんは、私が何故そのアカウントを見られることを嫌がっているのか聞いているのに、幸村さんの的外れな返答に、困惑の表情を浮かべる真田さん。
なんかややこしいことになりそうだから、コスプレしてるのは自分だと白状しようと口を開いた時。
「さて、承諾を得たから、次は契約を交わそうか」
「け、契約……?」
そのフレーズを聞くと思い出しちゃうけど、まさか、ひとつだけ願いを叶える代わりに身体をゾンビに魔改造するみたいなことないよね…?
「特に難しいことはない。簡単な契約だよ」
幸村さんは真田さんの手首を掴むと、グイッと私の前に突き出してきた。あの真田さんがいとも簡単に動かされるとかめっちゃ力あるじゃん幸村さん。
「何するんですか?」
さっきよりも帽子を深く被った真田さんは、どこかよそよそしいというか、落ち着きがない。
正直嫌な予感しかないけど、命とか取られないだけ良かったと思うことにしておこう。
「真田とキスするんだ」
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