※海堂くんが隣の席の設定。多分既存ネタだと思いますが書きます。

「おはよ、海堂くん」
「おう」

ランニングを終えたばかりだったのか、海堂くんの机にはタオルと制汗剤が机の上に置いてある。
今日も走ってきたのか。熱心だなぁ。

「あ、その制汗剤最近出たやつだよね」
「ああ、ちょうど制汗剤が切れた時に出てたから買ってみた」
「どう?いい匂いする?」

私がそう言うと、海堂くんは細長い青色のプラスチック容器を振り、蓋を開けて私へそれを差し出した。

「使ってみろ」
「え、いいの?」
「かまわねぇ、何個も予備があるからな」
「それじゃ、遠慮なく」

容器から手に透明な液体を出すと、ほんのり柑橘系の香りが漂う。

うーん、どこかで嗅いだことのある香りだなぁ。

「あ…シトラス?」
「当たりだ。よく分かったな」
「むかし友達がよく使ってたからね。これ、私好きだな」
「そうか」

軽く手に馴染ませて、首元に制汗剤をつける。
別に汗はかいていないが、なんだかスッキリした。

「海堂くんも柑橘系の香りが好きなの?」
「いや、べつに……」
「そっか、私もこれ買おっかなぁ…あ、でもそうすると暫く海堂くんと一緒の香りがすることになるね!」
「な……!」

無意識で言ってしまったとはいえ、ちょっと恥ずかしいことを口走ってしまった。
海堂くんが真っ赤になるから、なんだかこっちもつられて赤くなってしまう。

「あ、ごめん、嫌だった?」
「フシュゥゥゥ…そうじゃねぇ……」
「そっか…あ、これありがとう」

海堂くんへ制汗剤を返すと、たぷん、と音をたてて中の液が波打つ。容器が透明な青色だからか、小さな海みたいだった。

「……ああ」

海堂くんも、タオルで汗を拭ってから制汗剤を首元につけた。

あ、わたしと一緒の香り。

「……」

海堂くんもそれをつけてから、同じことを思ったのかは分からないが、ちょっと照れくさそうだ。
あんなこと言わなきゃよかったかも、ちょっと気まづいな。

「そうだ、桃城くんに教科書貸してって頼まれてたから、私授業始まる前に行くね」
「…!いくな!」

英語の教科書をバックから取り出すと、いきなり海堂くんが叫んだものだから驚いて落とすところだった。危ない。

「…なんで?」
「……その、アレだ、桃城が忘れたのが悪ぃから、お前が貸してやる必要はねぇだろ」
「でも約束しちゃったし、もうすぐ授業始まっちゃうから…ごめん、行くね」

らしくなく、しどろもどろに話す海堂くんは、やはり行って欲しくなさげだったが時間もないし約束を破るわけにもいかないので、私は彼を尻目に教室を出た。
教科書貸すくらい別にいいと思うんだけどなぁ。

どうして海堂くんがあんなに慌ててとめたのかをぼんやり考えながら桃城くんのクラスに到着。
私を待っていたのか、入口付近に桃城くんが待ち伏せていた。

「お、やっと来たか。待ちくたびれたぜ」
「ごめんね、はい、これ」
「おう、サンキュな!……あれ、名字今日なんかいい匂いすんな」
「うん、制汗剤使わせてもらったから」
「(この香り、もしかして…)ふぅん……へぇ〜…」
「なに?ニヤニヤして」
「いーや、なんでもねぇな、なんでもねぇよ」

そんじゃな、と、教科書を軽く私の頭に当てて自分の席に向かう桃城くん。

…なんだったんだろう?


****


「マムシィ、お前も隅に置けねぇな、置けねぇよ」
「何の話だ」
「あーあ、いい匂いだったなぁ、今日の名字」
「……!テメェ…!」
「お前ら2人して同じ香りって、同棲中のカップルかよ」
「カッ……何言ってやがるテメェ!」
「まんざらでもねぇ癖によ」
「ふざけんな!大体テメェ教科書忘れてんじゃねぇよ!名字に迷惑だろうが!」
「あ?なんだ嫉妬してんのか〜?」
「違ぇ!」

「元気が有り余っているようだな」
「げ!手塚部長!」
「桃城、海堂、グラウンド20周だ」

「クソっ、お前のせいで」
「お前こそ突っかかってきただろうがよ」
「もう10周増やすか」
「「走ってきます!」」
prev next
back


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -