「ネジキぃ。雨、降ってる」


先ほどまでは晴れていたというのに、もくもくと暗雲が立ち込め、
たちまち辺りはザァザァ、ザァザァ雨の音。 


「ナマエー、雨は嫌いー?」

「うーん、確かに、外に出歩くには不便だけど……
雨が降ることで喜ぶポケモン達もいるんでしょうし、
それに……雨の日の静けさは好きよ」


ハスブレロやニョロトノなどはさぞ大喜びだろう。
雨の中を水ポケモン達ははしゃぎ回るに違いない。


「ネジキは?」

「ぼくも雨、好きですよー。
すいすい に雨受け皿。水系の技の威力も上がる。
水タイプのポケモンでは有利に戦えるよねー」

なんてぼくが言うと、彼女は呆れたように

「もう、ネジキはいっつも
 ポケモンバトルのことばっかり考えてるんだから」
というから、

「そんなこともないよー」
と返した。


ぼくは先ほどまで目を通していた
ポケモン達の育成データをぼんやりと眺める。


「じゃあ、何考えてるのよ」

彼女が訝しげに聞く。


「さーね」

これはぼくだ。


「さーねって……教えてくれないの?」

「言いたく無いんだよー」

「言えないようなことなのね」

「言えない訳じゃなくてさー、言いたく無いんだ」

「同じだわ」

「少し違うと思うけどなー」


ぼくがそう言うと、「あっそ」とヨミが諦めた様子で窓際に移動した。
窓の景色はただひたすらに、雨空を映し続けるだけだというのに。


ザァザァ、ザァザァ
雨は止まない。


「ナマエ」


ぼくは椅子から立ち上がり、手元の資料を机の上に置いて、
ナマエの傍で立ち止まった。
彼女の視線は相変わらず、雨粒にそそがれている。


「晴れたらさー、どっかに出かけませんかー?」

「あら、ネジキから誘うだなんて、めずらしいこともあるものね」



彼女がふふっと微笑した。




(ナマエ きみのことを考えてるんだよ)


(2009.03.09)





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