「リオルって、本当に可愛いわ。
 あーなんでこんなに可愛いんだろ。うはぁ、耳ふわふわだぁ!」


リオルが耳をピクつかせ、顔を左右に振る。

「あ、ごめん。くすぐったかったのね」


ごめんね。とまたもぎゅっと抱きしめるナマエ。
ナマエは先ほどからリオルの相手ばかり。
抱きしめて、ほお擦りして。
リオルもさぞ気持ちよさそうにナマエに体を預けている。
ああ、ぼくもあんな風にナマエにかまってもらいたい……って
何考えてるんだ、自分。




―――“ママ”



突然、頭の中に響く声。
小さな子供の声のようだ。
ここには、ぼくとナマエとリオルしかいない……ということは

「ねぇ、ネジキ!
 リオルが喋ったよ、今ママって言ったよ!」

すごいすごいとリオルの頭をなでまくるナマエ。
少し照れくさそうに尻尾をぱたつかせるリオル。



「むー。正確には喋った訳では無く、
 波動によるテレパシーですねー。」

「そうなんだぁ。
 うわぁ、でも嬉しいなぁ。私のことママだって。
 なんだか本当の親になった気分。
 子供を持つってこういう感じなのかなぁ。」


ナマエのリオルを見つめる目は、限りなく優しい。
きっとナマエは、すばらしい母親になると思う。
優しく、時に厳しく、愛情を持って子供にも接するんだ。
子供はヨミにそっくりな可愛い女の子がいいな、
彼女の子供だからきっとやさしい子に違いない。
あぁ、でも男の子でもいいか。ポケモンが大好きで、知りたがり屋な……


「どうしたの?さっきからぼーっとして。」

あ、でもいつものことか。なんてナマエが笑うから。
「そうですかー?」と、とぼけてみせた。


―――“パパ”



またもや響く声。
ナマエに抱かれているリオルが、こちらをじぃっと見つめている。
つややかな瞳。

「……え。」

「うわぁ!ネジキのことお父さんだと思ってるんだ。」


ナマエが、「ほーら、お父さんだよー」なんて言いながらリオルを渡してきた。
ふわふわとした小さな体は、それでも鼓動をしっかりと刻んでる。体温が暖かい。


「なるほど!ナマエとぼくが夫婦ですかー。」

リオルの頭をそっとなでてやる。


ぼくとナマエと、その子供との生活を思い浮かべてしまって、ぼくはこっそりと笑った。






(2009.03.09)





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