バトルファクトリー。
いつも一緒に冒険しているポケモンたちは全て預けて、
ファクトリーで支給されるポケモンで戦う。選べるのは3体。
私は中々そのルールに馴染めず、連勝記録を伸ばせないでいた。


バトルフロンティアには多種多様なルールがあるが、
ファクトリーだけは別だ。
トレーナーの力量、そして知識量共にハッキリとでてしまう。



通りの脇にある木製の洒落たベンチにへタレこむ。
背もたれに体をぐいっと預けた。
ああ、くやしい。
自分が弱いだけってことぐらい分かってるよ。
私なんてトレーナーとしてまだまだだったんだなぁと痛感させられる。

へこんだ時にはいつもジムバッジを磨くことにしている。
そうすると今まで頑張って来た自分に元気を貰える気がするからだ。




バッジケースを取り出そうとカバンのポケットを探る。
と、いつもバッジケースと一緒にしまってあるトレーナーカードが無い……。
うそ。ここにしまってあるはずなのに。
カバンの中を引っ掻き回し、
ポケットにも手を突っ込んでみるがやはり無かった。

どこかに落としてしまったのかもしれない。

方腕のポケッチのダウジング機能で急いで辺りを探す。
小さな画面を軽く、人差し指でトントンと叩いてみるが反応は無い。



トレーナーカードはいわばトレーナーの身分証明書。
これが無ければ公式戦に出られないし
ポケモンセンターの宿泊料の割引なども利かない。
ましてやフロンティアへの挑戦も。
まずいことになった。
再発行には最低でも一週間はかかると言う。




と、突然後ろから声をかけられる。

「きみが探してるのはコレですかー?」

間延びした声。男性のものだ。緊張感の欠片も無い。
思わず振り向くと


「あ、私のトレーナーカード!」

「はい、どーぞ」と手渡されたそれは
紛れも無く私のトレーナーカードだった。

「ありがとう!貴方が拾ってくれたのね。
 私、これが見当たらなくて本当に困っていた所なの」





見たところ自分と年の近そうなその青年。
水色のネクタイに黒のベスト。
深緑のズボンは7分丈で、黒の革靴との間には白のタイツが覗いている。
奇抜な髪形。半分だけしか開かれていない眼は眠そうな印象。

「貴方もフロンティアに挑戦してるトレーナーさん?」

トレーナーならば最低一匹、最大6匹ポケモンをつれて歩くはずだ。

「むー、ちょっと違うかなー」



確かに彼は腰にモンスターボールを携えてはいなかった。
代わりにベルトで腰の辺りに固定されている黒の入れ物には、
水色の機械らしきものが入っている。
トレーナーと言うには軽装過ぎるかもしれない。

ポケモンを持っていないのにこんな所に居るということは観戦者か。


ふとポケッチに目をやると、時計は12時を表示していた。



「ねぇ、お昼ごはん食べた?」

「いーえ、まだですがー」

「じゃあさ、一緒にご飯食べない?
 ポケセンの食堂だけど。
 お礼に、おごるわ」

「ではー、お言葉に甘えてー。
 ちょーどお腹が減ってたんですよねー」





(11.03.11)





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