薄暗く、足場の悪い道を進んでゆく。 空気はしめっぽくよどみ、少しばかりひんやりとして肌寒い。 静けさの中にも、時折ポケモンの羽音が聞こえる。 さしずめこの洞窟に生息するコロモリだろう。 ここは古代の抜け道。 最近発見された古代の城に繋がる抜け道だ。 古代の城というのは砂に埋もれた大昔の遺跡で、 発見された当初はずいぶんと話題になり、 新聞や報道番組で頻繁に取り上げられていたことを思い出す。 その古代の城に繋がる抜け道は、ヒウンからホドモエまで繋がっている。 よくもまぁ現在ほど道具の発達してなかった時代に、 これだけの距離の穴を掘れたものだなぁとつくづく関心する。 とは言っても、今行なっている調査は全く関係が無いのだけれど。 時折つま先に当たり、蹴飛ばされた小石がコロコロと音を立てて転がっていく。 足音は私と、そしてもう一つ。 すぐ隣をゆったりと歩く、すらりと背の高い、白衣を纏った男。 輝くブロンドのオールバックに沿って、 明るい青色の髪が一束弧を描いている様は、土星を思わせる。 なんとも個性的な髪型だが、性格もなかなか……。 手元のライブキャスターで時刻を確認する。 暗く閉鎖的な場所に長時間いると時間感覚が狂うからいけない。 目が暗闇に慣れているせいか明るい液晶画面を見ているとチカチカした。 そろそろ昼食の時間が近い。 「アクロマ博士。調査予定時刻を過ぎましたが。 団員もそろそろ引き上げる頃です」 私がそう言うと白衣の男アクロマは、眼鏡の奥の金色の目で私を捕らえ、 それから、そっと上品に微笑んでこう言った。 「わたくしはもう少し」 彼が口を開くと、心地よい低音が洞窟内に響いた。 博士の声は人を惑わせる魔力を宿しているのではないかと錯覚してしまうくらいに、甘い。 私は早く戻って、昨日徹夜してもまとめきれなかったデータを処理したいところなのだけれど。 欲を言えば昼食後に軽く仮眠を取りたいくらいだ。 「ナマエさんは先に戻っていても構いませんよ」 博士はそう言いうと、洒落た眼鏡のブリッジを白手袋で包まれた指で押し上げた。 「……分かりました。そうさせて頂きます。 アクロマ博士もあまりご無理をなさらないように」 「ご心配なく!」 私は一礼してアクロマ博士と別れると、 もと来た道を戻り、下水道を通ってヒウンシティに停泊している プラズマ団の科学力の誇る帆船、プラズマフリゲートへと帰還した。 (2012/08/27) ← ×
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