青く澄み渡る空。 17番水道にあるP2ラボがひっそりと佇む小島の近くに、 プラズマフリゲートは停泊していた。 博士と私はプラズマフリゲートの甲板に出て海を眺めていた。 「いくら研究の為とはいえ、 少しいじわるなことをしてしまいました」 「もういいですよ」 ここまで博士の様々な奇行に振り回されてきた訳だけれど、 博士に付いて行くのを決めたのは他でもない私だ。 それに、終わりよければ全て良しというやつだ。 心地よい潮風が私の髪を撫でる。 「ナマエさん、あなたはここに残っていてもよろしいのですか?」 「隠れて動いていたとはいえ、 私もすぐにここを出て行くという訳にはいきませんよ。 ……せめて、ほとぼりが冷めるくらいまでは。 それにもう、博士にはどこまでもついていく覚悟ができてますよ」 「おや、それは逆プロポーズという奴ですか!」 「え、えっとですね……」 博士の言葉にうろたえてしまう。頬が熱い。 「おっと、またいじわるな質問をしてしまいましたね!」 彼はそう言うとくすくすと笑った。 「博士っ!」 からかわないで下さいっ、と声を荒げるが、 彼はただ笑い続けるだけだった。 「ま、博士みたいな変人についていけるのは私くらいですからね」 「さ、さり気なく変人とか言わないで下さいよ! 失敬な!」 博士はそう言うとこれは心外とばかりに眼鏡のブリッジを押し上げた。 目の前に広がるのは穏やかな海。 日の光を受けキラキラと輝いている。 「そういえば、あの質問の答えがまだでしたね」 ああ、そういえば。 「ナマエさん」、と名前を呼ばれ博士の方を向くと、 彼は改まったみたいに真剣な顔をしていた。 いきなりそんな真面目な顔してどうしたんですか、という言葉も飲み込んでしまうほどに。 眼鏡の奥の金色の目が、私を映す。 「あのとき、あなたに声をかけたのは、 あなたの能力を買ったというのもありますが、 おそらくわたくしの個人的感情によるものだったのです」 個人的感情……? それって一体……。 「わたくしは、あなたを手放したく無かった」 心臓が高鳴る。血液が全身を駆け巡るのが分かる。 立っているのが精一杯だ。 彼は白手袋に包まれた大きな手を私に差し出して、言った。 「助手という立場でなく、人生のパートナーとして、 一生、わたくしについて来て下さいませんか?」 私の心はもう決まっていた。 そして、彼の手をしっかりと握り、答えた。 「喜んで」 その瞬間どこからともなく拍手が沸きあがった。 「アクロマさん! ナマエさん! おめでとう!!」 一人また一人と物陰から団員が姿を現す。 「おやおや、みなさんお揃いで」 突然のことに博士の隣で固まっていると、 あっという間に団員に取り囲まれてしまった。 「俺、助手さんのこと、ちょっと狙ってたのになぁ」 「あたしもアクロマさんに憧れてたんだけど。 ……まぁ、助手さんなら仕方無いわね」 団員達はそれぞれにお祝いの言葉を述べてくれた。 湧き上がる喝采の中心でどうしたらいいのかと戸惑っていると、 耳元で甘い低音が響いた。 「みなさん期待していらっしゃるようですから」 博士はそう言うと私をひょいと持ち上げ、姫抱きにする。 すでに混乱していた頭がさらにパニックを起こす。 「え、ちょっ、博士!?」 顔が近い。 見惚れてしまうほどの端正な顔立ち。 ああ、こんなにシアワセでいいんだろうか。 今度は私が意識を失ってしまいそうだ。 「ナマエさん、愛しています!」 そういって博士は私に口付けた。 fin. (2012/09/17) ← ×
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