※中の人ネタ






あれは確か、まだ研究所にいた頃の話だ。



研究室に入ると机につっぷしてうなだれている博士が目に入った。

「博士、どうしたんですか」

と浮かない顔で溜め息をついている博士に訪ねると、

「ああ、ふられまして」

と博士が笑った。




博士は一生独身なんじゃないかという噂が出た矢先、吉報が届いた。
あのアクロマ博士に彼女が出来たのである。
話に聞くと女性の猛アタックに博士が折れたらしい。
しかもこれが非の打ち所の無い美人で性格も素晴らしいときた。
二人が並んだ所を見たと言っていた知り合いはドラマのワンシーンのようだったと評していた。
研究室では寿司の出前を取ろうと言い出したものまで居た。



「最近デートでカラオケに言ったのですが、
 その後から全く連絡がつかないのです」

「まさかとは思いますが
 ……アレ、やったんですか」

「はて、アレとは?」

「その、アレですよ」

「わたくしはいつも通り歌っただけですが」



……それだ!
絶対それだ!!



忘年会や新年会でカラオケに行くと博士が必ずやるのが、魔法少女メドレーである。
博士によると、潜在能力を引き出す(少女を道具によって変身させることにより能力を引き出している)、
という点において魔法少女と波長が合うのだそうだ。

博士が歌って女性がドン引きしている場面を思い描くのは至極容易であった。






確かに博士の声は素晴らしく、むしろエンターテイメントとしては確立されており、
何度も聞かされるうちに、私でさえネタとして楽しめるようになった、が。


「わたくしは何か間違った選曲をしてしまったのでしょうか」

「ですね」

「なるほど。では、最近の歌にすべきだったのか
 ……プリ○ュアなどはどうでしょう」

「いや、そういう問題じゃなくてデートでは魔法少女系は歌っちゃだめです」

「ダメですか!」

「ダメです」

「なるほど!
 ……次からは気をつけましょう」

「……」



この調子だともういっそ博士は研究と結婚する方が幸せなんじゃないかと思ったナマエであった。







(2012/09/13)




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