そして、勝負の時は訪れた。 「行けっ! ルカリオ!!」 「行きなさい! レアコイル!!」 キョウヘイ君がくりだしたのは、はどうポケモンのルカリオ。 それに対し博士はレアコイルを出して応戦する。 「ルカリオ! はどうだん!!」 「レアコイル! でんじはですっ!!」 ルカリオは自身に内在する波導の力を両の手で凝縮し、青く光る砲弾を打ち出す。 レアコイルははどうだんを受けバランスを崩したが、そのまま狙いを定め、 ルカリオにでんじはを当て、距離を取った。 「大丈夫か! ルカリオ」 「レアコイル! ボルトチェンジ!!」 アクロマ博士はすかさずレアコイルに指示を出し、攻撃する。 レアコイルはルカリオに電撃を浴びせると、モンスターボールに戻り、 代わりに出てきたのはジバコイルだった。 「さぁっ! もっとです、ポケモンの力を引き出しなさい!」 あれから、キョウヘイ君のポケモンが倒され、博士のポケモンが倒され、 キョウヘイ君のポケモンが倒され……を繰り返し、キョウヘイ君は最後の一匹、 エンブオーだけとなってしまった。 対する博士はギギギアルに、最初にボルトチェンジしたレアコイルが控えている。 表面上は一進一退の攻防。 だが、何かがおかしい。 彼は、いつものキョウヘイ君はこんなものじゃないのだ。 技の指示を出してもあと少しのところでかわされてしまったり、 先読みされ返り討ちに合ってしまったり、 かわす指示を出しても避けきれず、当てられてしまっている。 そう、キョウヘイ君の指示が、明らかに遅れているのだ。 「なんたること! なぜポケモンの力を引き出せないのですっ!?」 博士もそのことに苛立っているようで、 ギギギアルに指示を飛ばす声がだんだんと大きく、激しいものとなっている。 やはり、博士に対する疑念、困惑、 それが彼の精神状態に少なからず影響しているのかもしれない。 しかし、このままではキョウヘイ君は……。 「四番道路での勝負のように! ポケモンの能力をもっと引き出して下さい!」 「引きだせって言われても……。 ええい!……エンブオー、つっぱりだ!」 と、ギギギアルと対峙していたエンブオーが突然方向を変え、走り出す。 向かう先はなんと……キョウヘイ君だ! 避ける間もなく、エンブオーがキョウヘイ君に激突する。 キョウヘイ君の体が宙に浮き、サンバイザーが飛ばされる。 が、キョウヘイ君は驚異的な身体能力で衝撃をうまく緩和し、 床に手を付き着地する。 「いったいなぁ! なにするんだよっ!」 キョウヘイ君をにらみつけるエンブオー。 てめぇこそ、何やってんだよ。とでも言いたげだ。 エンブオーのその様子にキョウヘイ君ははっとする。 「エンブオー。 ……ごめん。そうだよな」 キョウヘイ君はサンバイザーを拾い上げ、被りなおす。 口元はわずかに弧を描き、次に彼が目を開いた時には、 いつもの真っ直ぐな視線に戻っていた。 「いくぜ、エンブオー! 僕達の絆、見せてやろうぜ!」 エンブオーとキョウヘイ君がアクロマ博士に向き直る。 博士はそれを見ると、口角を上げ、呟いた。 「そうでなくては!」 「エンブオー! フレアドライブッ!」 赤い炎を纏ったエンブオーはギギギアルに突っ込んでいき、 回避することもままならず固まっていたギギギアルを見事にノックアウトした。 その瞬間、博士の目が魅せられたように輝く。 「最高に興奮してきましたっ、まだまだ続けましょう!」 (2012/09/10) ← ×
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