キュレム捕獲成功にあたり、プラズマフリゲートでは団員が一斉に食堂に集められた。 簡易の壇上に上がって司会をしているのは七賢人の一人、ヴィオだ。 七賢人と言ったって、二年前にゲーチスの野望を知った上で、 プラズマ団に残っているのはゲーチスを除けばヴィオ一人だけだ。 私は中継されたプラズマ団の集会の様子を、研究室のパソコンに回線を繋いで見ていた。 どうやらカメラは食堂の一番後ろに設置されているらしく、 食道に設置されている巨大なスクリーンと、 集会の前のほうにいるプラズマ団員の後ろ姿が映り込んいる。 最初に大型の液晶パネルに姿を表したのは、ゲーチスだ。 その瞬間会場全体がわずかにどよめいた。 最近は体調がかんばしくないらしく、プラズマ団員の前にも顔を出していなかったらしい。 革張りの椅子に深く腰掛けている。 彼の背後には何台もの監視用モニターが映っていた。 「我々のイッシュ征服という目的に必要なのは圧倒的なパワー! そして今、その圧倒的なパワー、キュレムの捕獲に成功しました!」 ゲーチスの演説。 二年前、イッシュ各地でポケモンを開放を呼びかけていたが、 実際は人々からポケモンを奪い、 それにより無力になった民衆をポケモンの力によって支配しようと目論んでいた。 表向きはアクロマ博士がプラズマ団のボスであり、 ゲーチスを従えているように見えているが、実際は違う。 雇われているのは博士の方だ。 「……我々が報われるのも後もう少しです。 我々はこの強大な力を用いて今一度イッシュ征服を成し遂げるのです!」 ゲーチスの演説が終わると、画面が切り替わり、 映ったのは操縦席に座るアクロマ博士であった。 「わたくしが二年前、プラズマ団のトップに就任してからというもの、 それまで縁もゆかりも無かったわたくしに、みなさんはよくついて来てくれました。 感謝しています。 みなさんの働きがあってこそ、わたくしもここまで研究を進めることができました」 博士のねぎらいの言葉に、感動のあまり涙を流している団員もいた。 無理も無い。プラズマフリゲートが完成してからというもの、 したっぱ達に船上で支給されるものと言えば水とパン、そして簡素な共同の寝室。 悪の組織と言えども同情してしまう。 博士の演説は続く。 「わたくしが学究の徒として求める理想、真実、 それはポケモンが持つ本来の力、それをどうすれば引き出せるのか…。 トレーナーとポケモンとの信頼関係。それもまた一つの因子ではある。 ですが、わたくしはこう思っています。 これからは、科学的アプローチのみで力を引き出すべきだと!」 博士のその言葉を聴いて、私は耳を疑った。 ……言ってることが、噛み合わない。 ――できうるならばこれまでどおり、 トレーナーとポケモンとの信頼関係であって欲しい―― PWTで博士は確か、そうおっしゃっていたはずだ。 なのに、どうして。 もし、博士の演説での言葉が真意だったとして、 それなら、私達が行なってきた研究は一体……。 (2012/09/03) ← ×
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