(※少しグロい感じで救われません)




――逃げなくちゃ、早く、どこか、あの二人が追いかけてこれないところまで


既に手持ちは全滅。
みんな私をかばって向かっていったけれど、
本気のサブウェイマスター相手に私一人で勝てるわけが無く、
あっけなくやられてしまった。


その後はこみ上げる恐怖に突き動かされるように、
葉を落とした木々の間を、ただ、走った。
走って走って、息が苦しい。口の中に鉄の味が広がる。
わき腹には刺すような痛み。
もう足だって鉛のように重たくて、どこまで持つか分からない。



「どこへ行くというのですか」

黒い車掌の声。低く響き渡る。
二人は走ってはいなかった。歩いている。
けれどその長い足は私を容易に追い詰めた。



ノボリはロープを取り出し、クダリはチェーンソーを掲げた。

嫌な音が響く。

ブーンと唸るそのギザギザの刃先に命を奪われるのかと思うと、さらに恐怖が襲ってきた。
かれらは、ほんとうに、わたしをころそうとしている。



「だからね、はんぶんこすることにしたんだ、ぼくとノボリで。」
「わたくしもクダリもあなたさまをお慕い申し上げているのです」
「ぼくも幸せ、ノボリも幸せ。これってスッゴクいいアイディア。
もちろん、きみも喜んでくれるよね」


はんぶんこ!?なにそれ、そんなの冗談じゃない!!


「ところでどう切り分けますか?」
「ぼく、ナマエの下半分を貰うよ」
「では、わたくしは上半身を」


狂ってる。狂ってる。
見開かれ血走った大きな灰色の目。

そこに映るはただただ狂気!


「つーかまーえた」

白い男に手首を強い力で掴まれる。



「やだっ、痛い、放して」


必死に抵抗するも、そんなものは全く効いていないようだった。
その隙に、黒い男が私の手足を縛る。


「やめてよ、やめて、やめてやめてやめて!」



叫べど叫べど、助けなんて来ない。



大の大人二人に囲まれて少女が逃げられる訳が無かった。

チェーンソーが唸る。

少女の叫び声が谺した!





(2011.03.01)





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