シュガースポットの行方をご存じ?
平花要素含みます
4限の終わりを告げるチャイムが鳴ると皆が一斉に席を立つ。向かう場所はカフェテリア。気温が暖かい内は外で弁当を持ち寄り食べる集団も見受けられるが夏終わりとはいえまだまだ日差しが容赦ない今日この頃では殆んどの学生が室内で温度調節のされているカフェテリアを利用する。最も夏休暇期間中に行われる特別授業に参加している生徒だけであるが。
「あ、こっちです〜!」
ひらひらと手を振る與儀の声。隣にいる花礫と與儀は場所取り組で今から来る平門と燭は注文組というわけだ。混み合った場所ではよく見られる賢い戦法のひとつ。
「悪い、時間がかかった」
「大丈夫ですよ〜あっ今日はパスタなんですね」
「なんだ花礫、仏頂面だな」
「うっせーよクソ眼鏡。俺、玉葱入ってないのな」
席に付き揃った4人は何時ものように食べ始め、授業の内容や世間話を始める。平門と花礫、燭と與儀は所謂恋仲というものである以前に友達というと違和感が拭えないがそのようなものである(なにせ平門と燭は花礫と與儀より2つ年上である)ため、昼食は決まって4人で取る。食事は人数が多いと楽しいとかよく言われているし。
もぐもぐと暫く無言のまま食べる事に夢中になっていると隣の女子グループからの声が自然と4人の耳に入った。
「ねえねえ来週の日曜のお祭りはやっぱり彼氏と行くの〜?」
「そうだよ!彼氏に誘われたんのー浴衣買い直さなきゃあ〜」
どうやら来週行われる祭りの話をしているらしく、彼氏の事や浴衣について詳しく話始めている。
「お祭り…」
與儀がフォークをくるくる回しながらパスタを巻いてぼそりと呟いた。
「燭先輩…一緒に行きますよね!」
「何故疑問ではなく確認なんだ」
最もな事を言う燭。與儀は唇を尖らせて「だって行きたいんですもん」と簡潔な理由を述べる。そんな子供らしい仕草が燭は実は好きであるとは知らずにやっているのだから與儀には天性の才能がある。
「分かった…行ってやる」
「やったあ!燭先輩大好き!」
そんな大声で言うな場所を考えろとお叱りを受けるが與儀のモチベーションは一気にマックスまで登りつめているため然程効果はない。そして與儀は思い出したように言う。
「花礫くんは平門先輩と一緒に行くの?」
「なっ…」
「勿論行くぞ。なんたって珍しく花礫が誘ってきたんだ」
「えっ?そうなの花礫くん?」
「ばっ違!だだ俺は奢らせようと…」
「俺とデートしたかったのか?」
「黙れクソ眼鏡!」
くくっと喉を鳴らして笑う平門に凄い剣幕で起こる花礫。そんな2人を微笑みながら見つつ燭に與儀は話しかける。
「あのう…浴衣着ますか?」
「着ないが」
即答。
「じゃ、じゃあっ俺が着たらっ…一緒に着てくれますか?」
「…考えてみなくもないな」
今度は少し間があいた。與儀はパアッと向日葵のような笑顔で嬉しがったが次の燭の言葉でまたシュンとしてしまう。
「だが私は浴衣を持っていないぞ」
「あ…そうなんですか…」
そこで昼終了5分前のチャイムの音。それに反応し辺りに残っていた生徒達はばたばたと教室へと戻っていく。平門と燭もじゃあなと言い残しカフェテリアを去っていった。
「與儀、俺たちも行こうぜ」
「…」
「與儀?」
「あっうん。行こっか」
首をかしげた花礫だったが次が遅刻に厳しい先生だったのを思い出し、トレイを片付け廊下を走った。與儀も花礫に続いたが思考は全く違うベクトルに働いていた。
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