真夜中シンフォニー




残業続きだった1週間。今日で体中のアドレナリンは全て使い果たした。現在の時刻は日付が変わって1時間。明日は昼近くまで寝てしまうか。疲れ果てた平門は家のドアを開けて中に入り、自室のベットへ直行する。ドアを開けて視界にいちばんに目に入ったのはなんとも気持ちよさそうにベットで寝ている花礫。ダブルベットを完全に1人で占領している。


「おい花礫…起きろ」


ぽんぽん肩を叩いてみても反応はなし。変わりにすーすーと規則正しい寝息が聞こえる。花礫は可愛い恋人ではあったが自分の疲労もピークに達しているため、タブルベットの中央に大の字で寝ている花礫をベットからつき落とした。


「っ…いってえ!!」


「おはよう花礫、おやすみ花礫」


ばふんとベットに横たわり、目を閉じると次第に眠気が襲ってくる。ああこのまま眠ってしまいたい。しかしそんなことをベットからつき落とされた花礫は黙って許すはずもない。


「おいあんた!なにすんだよ!」


「俺は疲れてるんだ」


「だからってしていいことと悪いことがあるだろ!」


「ベットを2人分も占領するな」


チッと舌うちが後ろから聞こえた。やれやれこれでようやく大人しく寝られる。そう思い布団を被る。


「あんたが残業続きなのが悪いんだよ…」


ぼそっと聞こえた声にうっすらと目を開ける。目の前には寂しそうな、犬だったら耳が垂れているような花礫。まあ確かに俺が帰って来なければ花礫は家に1人きり。寂しいと思うのも分かる。小型犬のような花礫を可愛く思い、両手を広げると無表情で胸の内に収まった花礫。


「眼鏡とらねえの?」


「とってくれ」


眼鏡のつるに手が伸びてきてゆっくりと眼鏡が取られる。前に花礫は眼鏡のある時とない時の変化が好きだと言っていた。現に今も花礫はじっと俺の顔を見ている。


「寝んの?」


「なんだ抱いてでも欲しいのか?」


喉を鳴らして笑うとばかじゃねえの、と呆れた顔の花礫。少しは期待していたくせに。なにしろ残業続きの毎日だったため、ここ1週間はご無沙汰だ。起きたら可愛がってやることにしよう。腕に抱いた花礫をぎゅっとさらに抱き込むと嬉しそうに胸に擦りよってくる。


「…さすがに苦しいんだけど」



仕方ない。少し腕の力を緩めた。



「お前ずっとこうしていろ」


「枕じゃねーんだから」


「抱き枕だ」


俺専用の、な。ぼっと顔が赤くなる花礫が可愛くて食べてしまいたい気もしたが何より眠いし、たまにはこうして抱き枕として寝るのもいい考えだ、と遠くなる意識の中そう思った。そして20分後には2人の心地よい寝息が部屋中に響き渡った。




真夜中シンフォニー




お題…Largoさま
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