器用な彼の置き土産





豪邸と言うには余りにも物が乱雑し、手入れの行き届いていない帽子屋の家。お茶の時間が過ごせる場所と寝る場所のみが確保出来れば満足だという世帯主の考えは、広く綺麗だった筈の家を初めて来た者が第一声にだらしないと言う程に変えてしまった。そんな魔窟とも言えるべき家の中で最も大きな家具はダイニングテーブルだ。全てが埋まる事など無さそうな程に多い椅子に囲まれたテーブルは今、ベッドやソファーに変わるセックス会場として使われている。


「ああぁっんっ……!んあぁあ……っ………お、い……この…馬、鹿猫……っ!んぁっ!も、やめ……っ!」


「ん、よく締まる…ッ」


バタバタと暴れる帽子屋のせいでテーブルの上に積んであった紙類が下に散乱していた。大事なティーカップや高級食器はテーブル中央でかたかたと音を立て、不燃ごみには成るまいと必死で耐えているようで。そんな奮闘が行われているとは夢にも思わず、チェシャ猫は勢いよく帽子屋の腰に熱く固いペニスを抜き挿ししていた。逃げようとする細い腰をしっかり掴まれ、後ろで感じる身体になってしまった──本人は不本意らしくセックス後はいつも機嫌が悪い───帽子屋はただひたすらにアナルの気持ち良さに喘ぎまくる。


「ああ、あぁ、あっ……っ…や、らあぁっ……ばかぁっねこっ!んっあっ…でっるっああぁっ!」


「ッ………」


食事やお茶の時間を楽しむべき場所。そんなところの上で射精をした。仰向けの為に自らの腹や胸以外にもテーブルクロスに精液が飛び散る。染みになるかなと帽子屋の体内に熱い飛沫を注ぎ込みながらチェシャ猫は暢気に考え、苦笑した。勿論はあはあと胸を上下に動かして呼吸を繰り返す帽子屋にはそのような事を考える余裕等、毛頭ない。


「おーいアリスさんのお帰りだぞ!……って、うわ、すげ…な、帽子屋。イカ臭いし、つーかテーブルでヤんなよ!」


「お帰りアリスちゃん」


2人の間で息を整える沈黙タイムが流れていた時、その場に不釣り合いな声が響いた。アリスだった。手には危うく落としそうになった白い箱を抱え、一瞬状況把握の為に止まった後、目の前の惨状に対して思ったままの感想を述べた。チェシャ猫はまだペニスを抜く事なくアリスの返事に軽く答えてへらへらと笑う。


「お散歩かい?」


「三月んとこ行って来た」


「仲良しだね〜その箱はなあに、アリスちゃん」


「あー…三月に貰った。ケーキ焼いたんで食べて下さいって告白付きでな!」


ふふんっアリスさんはもてるな〜と鼻高々に言いながら、箱に丁寧に縛られた赤いリボンをしゅるりと取る。チェシャ猫も三月うさぎのお手製ケーキに興味があるのか、アリスの手付きに注目していた。身体を少し揺らした為に、帽子屋の文句を言おうとした口からは「ぁっ……」と甘い声が洩れる。しかしながら空気の読めない金髪少年とお気楽な飼い猫は甘い声よりも甘い匂いにそそられたらしい。綺麗にデコレーションされたチョコレートケーキ──所々に生クリームやフルーツが乗っていて、中でも真っ赤な苺がポイントになっている──だ。


「美味しそうだねえ」


「んー…生クリームがある」


「ちょっぴりじゃない」


「俺的には許せない」


どれだけ心が狭いのさと猫が笑うが、アリスは大事な事なんだよと答えた。しかしその頬は緩みっぱなしでまるで引き締まってはいない。上機嫌でフォークを手に取ってぱくりと一口。僕にも頂戴、とチェシャ猫が口を開けたところで今の今まで黙っていた男が猫の長い髪を引っ張った。


「ッい」


「お、まえら…」


「んだよ帽子屋にはやんねーぞ」


「大丈夫大丈夫。安心してアリスちゃん。帽子屋さんは今僕のおちんちんでいっぱーいだから」


「成る程」


「殺す!」


早く抜けよと暴れるが体勢が不安定であるし、チェシャ猫に話をしながらもがっちりと腰を固められていては思うように動けない。帽子屋が髪を引っ張ることくらいでしか抵抗が出来ずチェシャ猫が痛いよと軽く笑う中、アリスはあることを思い立った。その顔つきは先程までとはうって変わって悪どい表情。ケーキの上の生クリームの部分を指で掬い、チェシャ猫とじゃれる帽子屋の乳首にクリームをべちょりと落とした。


「ッ──てめ何す」


「なあチェシャ猫、生クリーム部分は全部あんたにやるよ。俺は三月んとこ行ってくるから」


「いいのかい?」


返事の変わりにひらひらと手を振り、アリスはその場から退場した。残された2人のうち1人は自分の身体に塗られたものと状況を把握しようとし、もう1人はにやにやと妖しい笑みを口に浮かべている。


「アリスちゃんてばすっかりお利口さんになったんだねー。育て方が良かったのかな」


「ひ…ぁッ」


チェシャ猫はそう嬉しそうに言いながら、ベロリと普通の人間よりもざらついた舌でクリームまみれの乳首を舐めた。帽子屋が反論するには既に時遅し。より一層盛りと興奮の増した雄猫は目の前のデザートを頂くべく、ギラギラとその瞳を輝かせ、艶めく肌にむしゃぶりついた。




器用な彼の置き土産




微妙にアリ三も混じりました。力尽きた感もりもり&大したエロくもなくすいません´`生クリームプレイ入りたかったんですけどね…!機会と余力があればいつか続きが書けたらいいです。

お題Largoさま






- 9 -