岡崎→美佐枝



▼岡崎→美佐枝<<超捏造、if話







「……美佐枝さん、」


 思わず、ドキリとしてしまう。


 目前にいるこの男、最近妙に色っぽく、私の名を呼ぶんだ。


「……岡崎ぃ……。いい?私に手ぇ出した瞬間に、アンタ寮から締め出しよ?」


「……ちぇ」


 興が削がれた、とでも言いたげに、ごろりとベッドに横たわった岡崎。


 ……正直、助かった、と、思った。


 岡崎はまだ学生だ。それも、10近く離れた、お子ちゃまみたいな学生。


(……なのに、何ドキドキしちゃってんのよ)


 岡崎は、変だ。


 何って、その全てが。


 寮にいる他の男子学生とは、本当に、全く異質。


 笑っているようで、笑ってない男。ここにいるようで、どこか違うところに、いるような……そんな男。


 それは、岡崎の元々の大人っぽさに、何か別の、もっと大きな、冷めざるを得なかった事情があるのだと、薄々はわかってはいたけど。


(……アンタは、バカよ)


 彷徨って彷徨って、見つけたのが、……私?


 そんな筈はない。


 有り得る筈が、なかった。


 ……聞けば、岡崎は、幼い頃から父子家庭らしかった。


(だからよ)


 きっとそれは、年の離れた女……そう、つまりは私みたいな女に、母親を求めているだけなんだ。


 だから、本気にしてはいけない。


 ……そう、思っていたのに。


「……じゃあさ、美佐枝さん」


 ごろりと寝返りを打った岡崎の、真剣な双眸と、目が合う。


「どうしたら美佐枝さんは、俺と付き合ってくれんの?」


 それは、余りにストレートな言葉だった。


 ドクン、と跳ねた鼓動を抑えて、私は はは、と、渇いた笑いを漏らした。


「……そうねぇ、敢えていうなら……アンタ不良なんでしょ?それをすっぱり辞めて、更には東大とか京大とか、あるいは早稲田とかに現役で合格しちゃったりなんかしたら、付き合ってあげちゃってもいいかしらね〜?」


 だから、私はてっきり、この言葉にも。


 ――んじゃ辞めとく


 コイツは、こう答えると思ったのに。


「……それ、約束な。絶対忘れんなよ」


 そう行って、私の横をすり抜けていった岡崎に。


「…………バカ」


 苦しくて切なくて、それからとても嬉しくて。


 私はひとり、涙した。


 

 
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