岡崎×風子

 





 とてもとても、愛しい女の子がいる。


「……風子」


 後ろから、拐うようにふんわりと抱き上げると、途端に目をまんまるくして、俺のシャツを掴む少女。


 ――伊吹風子。


 腕のなかで困ったように俺を見上げる、ちっちゃなちっちゃな俺の彼女。


「……ぐ、グラマラスで大人な風子を突然抱き上げるなんて、岡崎さんは、失礼にも程があります。とても最悪ですっ」


 ぴっと立てられた人さし指。


 風子にはそう言われてしまったが、だがしかし、そうした瞬間に、かぁっと、耳まで真っ赤にして言う台詞でもないと、俺は思う。


 思わず小さく笑んでしまった俺に、風子はとうとう、ぷしゅりと音をあげて、泣き出しそうに目を伏せた。


 抱き上げられて恥ずかしいのか何なのか、いつもよりも格段に大人しく抱かれている風子に、もう、愛しくて可愛くて、ただただ笑むことしか出来ない俺。


 今この瞬間が、とても、幸せで。


「……なぁ風子。お前のどこが、グラマラスで大人なんだよ?」


 言えば、


「……主に全部です」


 やっぱり口が減らない、いつもの風子。


 だけど、そう言いながらも、きゅ、と掴まれた胸元が、妙にくすぐったかった。


「……風子」


 風子の耳元で、囁くように、そう言う。


 さっと肩を竦めて、ふにゅ、と目を瞑った風子のおでこに、俺は優しく、キスを落とした。


「お前は一生グラマラスにはなれないだろうけどな、」


 目をそっと開けた風子が、俺を見つめる。


「きっと一生、可愛いままだよ」


 その言葉に。


「……最悪です」


 風子はやっぱり、とても可愛く笑ったのだった。


 

 
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