料理人の才能
ココは逃げる。
追い掛けてくる一人の女から。
「僕は女性を傷付けるのは嫌なんだけどね…。
ポイズンミサイル!!」
ココは中指と人差し指を女の方に向け指先から毒を作り出すとそれを鋭く弾丸の様に放つ。
女は包丁を取りだし美しい包丁捌きで毒玉の軌道を変えていたのだ。
しかし小さな動物を守るために身を呈する女、しかしココは追われる身であり捕まるわけにはいかない為に容赦なく毒を放つ。
「麻痺毒だから大丈ー!?なぁ!?」
なんと、当たれば何十倍もの大きさの動物も麻痺する毒に何事も無かったかのように動く女に驚く。
女は動くと同時に何かを呟くとココの上から数匹の猛獣が牙を向く。
「毒砲!」
猛獣に毒玉を当て女の方を向くともう誰も居ない。
「つーかまえた!!」
猛獣が死角となり上からココを押し倒す様にのしかかるり、両手を掴む女。
「なぁ!?」
「初めまして!お兄さん!私はアリア!」
笑顔のアリアにココは警戒心を緩めない。
「可愛らしいお嬢さん。ごめんだけど僕は捕まる気は無いんだ。退いてくれないと…」
ココは掴まれた両手から毒を作る。
普通の人間なら危機感で体が離れる筈なのにアリアは全く動じないどころか分泌された毒は両手を溶かすも直ぐに元に戻る。
「…!?き、君…何とも無いのかい?」
ココは上に乗るアリアに恐る恐る話し掛けると¨全然¨と笑顔で返される。
これには¨毒人間¨のココもお手上げであった。
ココは体の力を抜き敵意が無いことを示す。
「良かった…優しそうな人だったから戦いたくはないなぁてっ思ってたの。」
「優しそう…そうかな…?」
ココはアリアの体の力が緩まると同時に彼女の身体を押し返し今度は自分が上になるように押し倒す。
「これで形勢逆転だね。僕を捕まえるのはよした方がいいよ。僕は怒ると君に何をするか分からない。」
「お兄さんは¨第一級危険生物¨じゃない。」
「え…。」
ココは不意の言葉に動揺する。
「私はお兄さんが恐い人だと思ってた。息なり毒を喰らってしまったけど…私が呼んだ猛獣を殺さなかった。貴方みたいな優しい人が危険な訳ないよ!」
「その確証も無いのにかい?」
アリアは頷く。
「確証なんて要らないよ。だって私を殺さないもの、安心して欲しい…私は意味は違えど¨隔離¨された身だから気持ちはよく分かる…。私が全力で貴方を守るから!
貴方を隔離なんてさせない!」
アリアの真っ直ぐな瞳に思わず手を放すとまだ毒を分泌しているココの手を握り返す。
「絶対に放さない!」
「君は毒を恐れないんだね。」
「どうして恐れるの?貴方はしっかりコントロール出来るてっ信じてるし、私には効かないよ。」
ココは顔をアリアの顔すれすれに近付け微笑む。
「確かに…本当だね。大量の毒を出そうとしてるのに君から死相が見えない。君みたいな人間は初めてだ。」
ココは今まで自分を¨毒人間¨として恐れる者ばかりであり、自分自身も人を傷付けてしまうかもしれないと恐れていた。
だから、毒を恐れずこんなにも接してくれる人間は初めてだった。
「お兄さん…?」
「ココでいいよ。アリアちゃん。」
「ココさん、一緒に行こう。
私絶対にココさんを辛い思いをさせないから!」
アリアは胸を叩き自信ありげな表情にココは幸せに満ち足りた様に微笑むのだった。
グルルルル……。
二人の後からかなり捕獲レベルの高い猛獣が現れアリアは後退りするがココは前に出る。
「ココさん。」
「お礼として僕がIGOまでエスコートするよ。アリアちゃん。」
「ありがとう、ココさん」
それから数日後…。
IGOにより検査されたココは¨第一級危険生物¨とはならなかった。
「アリアちゃんてっ…僕の兄弟なのかい!?」
ココはアリアの顔を見詰めると頷く彼女。
「アリアちゃんが僕の妹か…なんだか変な気持ちだよ……」
「私は嬉しいなぁ、ココさんみたいな優しい人がお兄さんだなんて…」
笑顔なアリアにつられて笑顔をこぼすココは思い出したかの様に袋からある物を取り出す。
「これは……?」
「これはポイズンフラワーと言って特殊調理食材なんだ。」
赤色の斑点のついた白い蕾の花束をアリアに手渡した瞬間、花開き麗しい赤い果実が花の真ん中に実る…。
その姿はまるでアリアな心を許した様だった。
「わぁ…凄い…。綺麗な花…。」
ココは思わず目を見開き目の前の光景を脳裏に焼き付ける…。
「君は…食材に愛されているんだね…。」
「え…?」
ココは首を振った。
「アリアちゃんならきっといい料理人になれるよ。僕が保証するよ。」
アリアはありがとうと微笑むとココはそっとアリアに触れた。
「ココさ…ん?」
「僕はこれからはひっそりと過ごそうと思う。
でもアリアちゃんとはまた会えそうだ。
その時は…僕が……いや、何でもない。」
ココはキッスという大きなカラスに飛び乗りアリアに大きく手を振った。
「じゃあね、アリアちゃん。」
「今度は私の料理人食べて下さい!」
「約束するよ。」
ココを乗せたキッスは飛び去ってしまった。
一人残されたアリアは花を見詰め小さく微笑んだ。
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