第一級保護生物


「アリア、話がある。」

会長が口を開く前にアリアは頭を深く下げる。

「ごめんなさい。内緒で出ていってしまって…。こんなにも大事になるとは思わなくて…どんな処罰も受けます。だから…」

鉄平の前に立ち両手を広げる。

「彼を罰しないで…下さい。
鉄平は私の命の恩人なんです。」

会長は大きく笑うと席を立ち上がり頭を撫でる。

「え…。」

「何を言い出すのかと思うとそんなことか…。
てっきり反抗期かと思ったわい。
ワシはそんな事は気にしておらん。」

会長がアリアに向ける目は会長としてではなく一人の父親の優しい目であった。

「お父さん…。ありがとう。」

「成長したな…。ワシゃ…嬉しいわい
だがな…罰は受けてもらうぞ」

アリアは頷く。

もちろん覚悟はしていたが胸が苦しい。

「お前には十日間の隔離を命ずる。」

アリアは余りにも罰が軽かったのに対して驚く。

「と…十日…だけでいいの?」

「なにせ¨第一級保護生物¨に認定されておるお前を外に出すんじゃ。許可を貰うのに時間がかかるのじゃ。」

アリアは目を丸くする…。

「私が…¨第一級保護生物¨?」

どうやら会長によると
アリアのグルメ細胞は回復能力に特化しておりどんな傷でも最大一時間で直るという優れた能力であり細胞を使えば医療も大幅に進歩するかもしれない上悪用されるのを防ぐ為という事で¨第一級保護生物¨になっているらしい。

「お父さん、十日過ぎたら自由に生きていいの?」

「いいや、お前にはワシの手伝いをして欲しいのじゃ」

「何をしたらいいの?」

アリアは目を輝かせる。

「手伝いといっても只の親族紹介なんじゃがな。
お前には¨ある人物¨を探して欲しいのじゃ」

「ある人物…?」

「¨ココ¨という男じゃ」

アリアは首を傾げる中に鉄平は驚く。

「ココてっあのグルメ四天王の!?」

「どうして探さないといけないの…?」

会長は困った顔をする。

「あやつは体から毒を作る事が出来る¨毒人間¨で第一級危険生物になるかも知れんのじゃ…。安全だと教える為に一度医療機関に来てもらいたいのに逃げてしまってのぉ…。」

「可哀想…。」

アリアは心を痛める。

自分は¨治りやすい人間¨なだけ幸せだったけれど保護に近い形で隔離された。

ココという人は¨毒を作れる人間¨なだけで隔離される上、¨危険生物¨ということはきっと良い思いは出来ないだろう。

「分かった!十日我慢してその人を探すよ!」

アリアの決意に会長はホッとした。

「なら、早く元の場所に戻るぞアリア。皆が心配しておる。与作世話になったな。」

「おう、何時でも来いよ!あんたなら大歓迎だぜ。」

アリアは鉄平の元に駆け寄り抱き付く。

「アリア!?」

「ありがとう!今日の事忘れないよ!
鉄平!また会える?」

鉄平は抱き返したいが会長の前だった為に慌ててアリアを引き離す。

「また、会えるよ。俺は何時でもてっ…訳じゃ無いけどライフに居るからよ。それにお前が隔離されてない限りは絶対に会えるよ。んー…今度はアリアの手料理でも食べたいなぁ…てっ…。」

アリアは大きく頷き力一杯抱きついた。

「鉄平大好き!!今度会えたら美味しい料理作るね♪」

「あわっ!?ちょっ!?アリア!会長見てるでしょ!?」

「ほほぉ…ワシの娘を…。」

「ちょっ!?待って下さいてっ!これは何かの誤解です!お父さん!」

「お前のお父さんじゃないわ!」

ドタバタとする中与作は一枚のカルテに目をやる。

「こりゃ…¨第一級保護生物¨だな…。」

この小さな呟きはきっと会長以外には聞こえなかっただろう…。






会長と共に隔離場所という名の家に向かう最中会長は嬉しそうにアリアに話し掛ける。

「実はなアリア。」

「ん…?」

「お前には兄弟が四人も居るのじゃ。」

アリアは思わず足を緩める。

「私にも兄弟がいるの?」

「全員孤児だったから血は繋がっとらんが、れっきとした兄弟じゃ。それでお前は一番の末っ子でワシのただ一人の娘じゃ。」

頭を優しく撫でるとアリアは自然と笑顔になる。

「今は皆何処で何をしているの?」

「それは嫌でも分かる筈じゃ…。
まぁ、ヒントくらいはくれてやろう。」

会長は人差し指をアリアに突き付け

「名前はトリコ、ココ、サニー、ゼブラじゃ。」

一人聞いた名前に驚く。

「もしかして…ココてっ…。」

「そう、お前は兄を探しに行くのじゃ」

「楽しみだなぁ…どんな人なんだろう…。」

期待を胸にアリアは茜色の空を眺めた。








十日後…。

アリアは目撃情報を便りにココを探す中深い霧の中に入る。

「この辺な気がするんだけどなぁ…。」

どうやらココはダーバンにマントをまとった姿だという。

「ん…?あれは…。」

視界の先にうっすらとした影が見え、その姿はまさにココだと思われる。

声をかけようとした時だった。


「ポイズンミサイル!」


アリアの身体目掛けて紫色の液体が物凄い速さで飛んでくる。

包丁で液体の軌道を交えてかわすも余りにも多い為捌くのでやっとだった。

軌道を変えた場所に小さな兎が通る。

「あ…!駄目!」

アリアの体は動いていた。



ドッードッードッドッドッ!



背中に貫かれたような痛みが走る。

抱えた恐がり体を震わせる兎に¨大丈夫だよ¨と呟き背中に猛毒を一身に受けたのだ。

麻痺毒だったのだろう…。

体は一瞬麻痺して動かなくなるがアリアの体質上負った傷から煙がでて直ぐに何も無かったかのように元に戻る。

「追いかけなきゃ…!」

アリアは霧の中、足早に駆けたのだった。



 

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