¨何か¨


嵐が巻き起こり、大雨が吹き荒れる中…。

一龍は突然の来訪者に度肝を抜かれた。

普段なら自分から現れない人物に。

「ゼブラ…!お主…」

必死な形相で苦しそうな娘を抱え叫んだ。

「おい!シジィこれはどーいうことだァ!?」














アリアは困惑していた。

あの時、洞窟で出会った大男が血の繋がらない兄弟であるゼブラだったなんて…。

「さっきから全部聞こえてんだよ!」

「ご、ごめんなさい!」

「分かったらさっさと飯作りやがれ!」

ゼブラ出所後より三ヶ月。

アリアはゼブラの500人の指名手配犯確保と100種の新種食材発見をするまでの間監視と手伝いを任されたのだ。

アリアの料理を口にするゼブラ。

「相変わらず悪くねぇな…。」

「本当ですか!?私、もっと頑張りますね!」

ゼブラの小言に嬉しそうに反応するアリアに少し照れたように頭をかく。

アリアはゼブラの手伝いをする度に…戦いも料理も上達していく。

元々強力な食運の持ち主であるアリアは、簡単に食材が寄ってくるように手に入り…さらりと調理する姿は小松に近いものを思わせる。

ゼブラにとってアリアはコンビに最も近い存在へと変わっていた。






アリアの身体の異変に気付いてしまうまでは…。







今日は指名手配犯を追跡していた際にアリアは不覚にも右腕を落としたが、アリアの超細胞で何事も無かったように回復し指名手配犯も半殺し状態で捕まえた。

その夜…ゼブラは何時も通りに眠りについた。

「あ、ああ、痛い…あがぁぁ…うあぁ…!」

確かにアリア自身の声で…そう聞こえたのだ。

「おい、アリア!どうした!?」

ゼブラは急いでうずくまるアリアの元に駆け寄り声を掛ける。

しかし、アリアはうずくまったまま苦しむばかり…心音が乱れていくばかり…。

「右腕か…!?どういうことだ!治ったんじゃねーのかよ!」

失って治った右腕、外観的には問題が無くゼブラのロケーションで体内を見やると右腕に黒ずんだ何かがあった。

正確に言うと¨違う誰かの細胞¨が移植されていた。

「ぜ、ゼブラ…助けて…」

「おい!アリア死ぬんじゃねーぞ!…クソッ…!」

ゼブラは大雨の中アリアを抱え一龍の元へ急いだ。









アリアはIGOの医療機関に移された。

ただひとつ分かったことはアリアの身体は¨何か¨に侵食されつつ有ること。

「おい…¨何か¨てっ何だよ!アリアはどーなんだよ!」

「安心しろ、死にはせん…¨何か¨を取り除く手術をするだけじゃ…。」

「クソッ…。」

ゼブラは壁に八つ当たり…穴の空いた壁から出ていってしまった。






あれから一週間後…。

アリアは倒れた事を聞き付けてゼブラ以外の四天王と小松、鉄平が駆け付けた。

アリアは何も無かったように眠りに付き目覚めない。

「アリア…本当何も無いような顔して眠りやがって…。」

トリコは眠る顔を見て安心する。

一方ケースに入った¨何か¨を観察する鉄平。

「これは…グルメ細胞…か…?」

外見は真っ黒な拳位の大きさの細胞の塊。

¨何か¨はケースの中無酸素で栄養源も断たれた状態でも動き回っていた。

そして、¨何か¨はアリアに引き寄せられるようにケースの隅を体当たりばかりする。

「だが…これはグルメ細胞にしては可笑しすぎる。普通ならもう朽ち果ててる筈だよ?」

「てかキモッ!キショイー!こんなのがアリアの身体の中いたとかあり得ねーし!!」

小松がアリアの手を握った時だった。

「ん……。」

「「アリア…!!!!」」

「ゼブラ…ん、あれ?皆…私一体…?」

トリコは嬉しさの余りアリアに抱き付き喜ぶ。

二人が喜ぶ中、アリアの一言に快く思わない三人。

¨ゼブラ¨とたった一言に嫉妬心を抱く三人。

「皆さん!ど、どうしたのですか!?」

アリアの目覚めに喜ぶ5人…。

その側で黒く蠢く¨何か¨は少しだけ大きくなった。








¨何か¨はアリアを酷く求めていた。

まるで自分が育つための母胎を求める子供の様に。






 

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