プロローグ


食が全てを支配する世界で私は恵まれた。

しかし人としては恵まれなかった。


赤子の頃に私を隠すためにグルメ界に私を置き去りにした。

私の荷物は一本の包丁のみ。

私は生きるんだ。

それしかない。

幸いグルメ界で生きる虎に拾われ生きてきた。

人間としてではなく虎として…。

食べ物も生き方も虎と同じ。

気付けば他の生き物達が何を言っているのか
何を考えているのか解っていたし
心を通わせることが出来た。


物心ついた時には私の元に父親だと言う男が現れた。

金髪のサングラスをかけた派手なお爺さん。

私を育ての親と離そうとする男。

私は何も分からないまま眠らされ連れていかれた。


目を覚ましたときには綺麗な天涯付きベットの上にいた。

ひらひらした布が体に付いていてなんだか落ち着かない。

小さく見える本を手に取り開く。

グルメ界に遺跡がありそこで見たのを変えた文字が並ぶ読めない事もないが分からないのが多々あった。

「目が覚めたか?アリアよ。」

振り向くとさっきのお爺さんに抱き締められる。
暖かい優しい温もり。

直感なのかもしれない本能なのかもしれない。

この人は自分の父親だと悟った。

「お父さん…?」

「そうじゃ…すまん!今まで酷いことをして…!」

涙を流す父親をそっと抱き返した。

その日からアリアは一龍と言う名前のお父さんと一緒に暮らした。

勉強も沢山した。

たまにグルメ界に連れて行ってもらって育ての親にも会えた。

沢山狩りをしてアリアは包丁を握り料理をする。

娘の作った物をお父さんは喜んで食べてくれた。

気付けば心身共に大きくなり店を持てるくらいの立派な料理人になっていたし一人でグルメ界に行ける程に強くなっていた。

でも1つだけお父さんは許していないことがあった。

私はお父さん以外の人間に会ってはいないのだった。

別にお友達なら沢山いた。だから気にはしなかった。


そんなアリアはちょっとした好奇心でお父さんに内緒で人間界の森に食材を狩に出かける。

これが彼女の人生の転機となるのだった。


 

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