再会と嫉妬


美食會に来て7日目の時だった。

アリアが何時ものように調理場に足を運ぶ。

「まさかとは思ったが…ここにいるとは思わなかったよ。」

アリアは思わず抱き締めた。

「スター…!スター…!会いたかったよぉ!」

ユーはアリアの肩を掴み引き剥がす。

「アリア、スタージュン様に対して口の聞き方に気を付けて下さい。」

「いや、いいんだ。それよりアリア、私もお前に会えて嬉しいよ。」

アリアは子供のように頷く。

「私…スターに沢山話しないといけないことがあるの…!だがら…その…」

スタージュンはアリアの頭を撫でるとそのまま額に口付けたのだ。

ユーは目を見開き拳を握る。

「スター…今のは…?」

スタージュンは意地悪く笑って見せる、どうやらユーのわずかな殺気に気付いていたのだ。

「大事な人への安全を願うおまじない…と言っておこうか。」

アリアは納得したように頷く。

「ならスターにも…」

「それは後でな。アリア、ついでに料理でも教えてやろう。」

「うん!」

スタージュンは調理場を後にする。




「スター…。」

「アリア、ボスが待ってますよ。はやく料理を作りましょう。」

「あ…うん…そうですね。」

ユーはアリアに笑顔を見せたが心が読める彼女に嘘は見えていた。

彼は怒っていると。

スターと仲良くしているのが気に入らないのだろうか。

「ユーさん…ごめんなさい。」

「何を謝っているのです?はやく料理を作りなさい。」

「あ…そうですね。」

ユーは思った。

アリアの瞳に映る自分の姿…アリアにとって自分の心は見透かされているのだと。

自分のスタージュン様への醜い嫉妬まで見えてしまっているのだと。

ますます興味が沸く…自分の側に置いていたいと心の中のドス黒い感情がもっと黒く染まってしまいそうだ。

「アリア、この後私の部屋に来てくださいますか?渡したいものがあります。」

「あ…はい、わかりました。」

アリアはユーの心の¨何か良くないモノ¨を知らない振りをして調理に熱中した。





アリアにとって心が聞こえるのはあくまで食材のみであり、虫などの知能が少ないものの声は聞こえない。

また、人間のような複雑な感情を持ったものなどは表面までしか読み取れない。

アリアにとって心の読めない虫は恐怖でしか無いけれど殆ど読めない人間も怖く無いが苦手で有ることには変わりはなかった。







アリアはあれから仕事を終えユーの部屋までの道を歩く。

鉄平やサニー…愛丸、確証は無いけどトミーロッド。

ユーの心は今まで会った人達の何人かに時々ある感情だった。

それが何だか分からなかった。

似ているのだけれども怒りや悲しみ、苦しみで違ったりする。







悩んでいるとユーの部屋の前に来ていた。

白い扉をノックする前に扉が開く。

「あ…ユーさん」

「どうぞ、入ってください。」

笑顔で迎え入れられた部屋は正に一面白の世界。

ユー自身が擬態出来るのでは無いかと思えるくらい何から何まで真っ白だった。

「ユーさんて白が好きなんですね。」

「ええ、そうなんです。これ、どうぞ。」

「白いドレス…ユーさんらしいプレゼントですね」

「着てみていただけますか?」

「是非とも着させて頂きます。」

アリアは奥の部屋へと入り何時もの赤いドレスから白いドレスへと着替える。






「ユーさん…。これでいいですか?」

アリアは白いドレスを身に纏っていた。

「ええ。とっても素敵です。」

白いアリアの心は純粋な真っ白なドレスそのものだった。

「あの…今日はスターと大事な約束が…。」

ユーはスタージュンがアリアに料理を教える日だったと思い出す。

「アリア、貴女はどうしてスタージュン様と一緒の時凄く輝いて見えるのですか?」

アリアは目を見開くと少し頬を赤らめる。

「それは…その…」

「貴女はスタージュン様に好意を抱いていらっしゃるのですか?」

「それは違います!彼は私にとって…その、特別な人なんです。」

アリアからすれば¨父親以外の初めて出会った人間¨だろうがそれを知らないユーには恋仲で有ると思える。

「ふーん…そうですか…。ならアリア、私と勝負しませんか?」

このままだとアリアはユーから離れてしまうと焦りがユーを急かす。

アリアが染まってしまうと…。

「勝負?」

「ええ、もし勝ったら彼の好みの料理を教えてあげましょうか?」

アリアは身を乗りだし勝負に乗った。


「それは良かった。では、これを飲んで下さい。」

「これは…?」

ユーから渡された錠剤に戸惑う。

「ちょっとしたビタミン剤ですよ。最近身体の調子が宜しく無さそうでしたので…これでは私の方が有利になってしまうかと…。」

アリアはユーの嘘に納得するとためらいなく薬を飲んだ。

「ユーさん、何の勝負をするのですか?」

ユーはアリアの両頬を愛おしそうに両手で包み顔を近付ける。

「貴女のこの麗しいくてあどけない唇に口付けを落としてしまえば…と何度思ったことか…。」

「ユー…さん…?」

ユーはアリアの唇を親指で軽くなぞると不適な笑みを浮かべた。

「いいえ、また今度にしましょうか…。スタージュン様をお待ちさせるわけにはいけませんから。」

ユーは扉へとアリアを誘う。

「え…でも…」

「早く行ってあげてください。」

アリアは頭を下げ急いでスタージュンの元へ行ってしまった。







そんなアリアの背中を見詰めながらユーは彼女に触れた親指を自分の唇に当てて笑う。

「私は貴女に何を求めてしまったのですかね」

ユーは親指を噛んだ。

指から流れる血はユーの白い袖を染めた。























 

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