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「この程度では私の腹は満たされんぞ?」
「ごめんなさい…三虎様…。」
アリアは悔しかった。
彼に出した料理はこれ迄の自分の力を出し切った。
それは三虎を満たせなかった。
自分がどれだけ非力なのかを思い知らされた気持ちだった。
しかし、アリアは嬉しかった。
「あの…!三虎様…!」
食事を終えた三虎をアリアは呼び止めた。
「なんだ?」
「ありがとうございます!」
三虎は満たされずとも全て食べてくれたのだ。
それは料理人にとって最上の至福である。
「…。」
三虎は無言で立ち去ってしまった。
アリアは小さく笑った。
「貴女の仕事は終わってはいませんよ?」
「アルファロ…。分かりました、頑張ります!」
「ふふ…楽しそうですね。」
「はい、三虎様が認めてくれるまでは諦めませんから♪」
アリアは自分の調理場へと向かう。
この調理場は今は食材調達のために出ている人物専用の調理場を使わせてもらっている。
誰なのかはアリア自身知らないが同じ料理人、素晴らしい料理人であることは調理場を見れば一目瞭然だった。
「私頑張るから…美味しくするからね。」
アリアは食材に話し掛けると食材は喜ぶように輝きを放つ。
「ほぉ…貴女の噂は本当だったんですね。」
「貴方は…?」
アリアの後ろに監視するようにいる男。
全身白で統一された男はアリアを見るや頭を深く下げる。
「初めまして、私はユー。貴女の監視を命じられている者です。」
「初めまして、アリアと申します。あの…私逃げませんから安心してください。」
「それは知っていますよ。私も逃げなければ危害は加えるつもりはありませんよ。」
ユーの半分脅しの台詞に唾を飲んだ。
アリアの仕事はほぼ三つ。
三虎様の食事の用意。
他の美食會の食事の手伝い。
食材調達。
それただけだった。
しかし、ユーはほぼ四六時中私の近くにいて、アリアを監視している。
アリアが部屋にいる時間と食事の時間だけはなはなれてくれるが…。
正直苦では無かった。
他の美食會のメンバーは皆癖のある人達だが怖くは無かった。
一人を除いては…。
アルファロに頼まれてアリアはトミーロッドという男に食事を持って扉の前に立ち扉を叩く。
「誰?」
「アリアと申します。食事を持ってきました。」
「ふーん…あそ…入って。」
素っ気ない返事を返されアリアは恐る恐る扉を開けると虫が飛び掛かった。
「ひゃああ!!」
「アリア!」
ユーはアリアの前に立ち虫を片手で切り裂く。
「あー…あ…死んじゃった…。ダメじゃないかユー、殺しちゃ…。まぁ…でも…」
「きゃあ!」
アリアの身体を引き寄せ口から虫の卵をちらつかせる。
「君気に入ったよ、アリアだっけ?ボクと遊ぼうよ♪」
「あ…あの…止めて下さい…。」
アリアはこの世で虫が一番苦手なモノ。
つまりトミーロッドは天敵なのだ。
恐怖で身体が震える。
「あは♪その顔…ボクだーい好きだよ?」
ユーはアリアの手を引き寄せようとするもトミーロッドはそれを許さない。
「ねぇ、ユー。止めてくれるかい。殺すよ?」
「申し訳ございませんが、アリアを監視するが私の命でございますから…。」
トミーロッドは不機嫌そうな顔でユーを睨み付けるとアリアの手をきつく握り…。
「あ…がぁ…ああ…やっ…やめ…痛た…あ」
「あは♪その顔だよ!良いねぇ!ほら♪ほ…」
ボキキィィー
「折れちゃった♪」
「アリア!!」
「いぁあああ!」
アリアの腕の骨をへし折ったのだ。
痛みで涙を流す姿を見て大きく笑うトミーロッド。
「アリア!大丈夫ですか!?」
「あ…くっ…大丈…ぶ…」
「へぇ…♪」
なんとアリアはものの一分もしないうちに骨が元に戻り何事も無かったように腕を動かしたのだ。
ユーは唖然になるなかトミーロッドは喜び跳ねた。
「君っ!凄いねぇ♪ますます気に入っちゃった♪おいで!一緒にご飯食べようよ!」
「あ…あのっ…お断りします。」
「無理。ボクの命令は絶対だから、わかった?」
トミーロッドの殺気に近いような威圧はアリアを震え上がらせた。
「トミーロッド様、それならば私も監視としてご一緒させてもらいますよ?」
「は?殺すよ?」
アリアは虫の卵が蠢く部屋とトミーロッド自身に恐怖で動けなくなる。
トミーロッドはアリアを追い込むように畳み掛ける。
「ねぇ、いいでしょ?アリア?」
アリアは「はい」以外の答えが口から出なかった。
食事を終えアリアが退出した後の部屋に一人残されたトミーロッドはフォークで遊ぶ。
「アイスヘルで出会った君は…とっても魅力的でさ、君に会いたかったんだよね…だからアリアから来てくれるなんて思っても無かったよ…。フフフ♪楽しくなってきちゃった。」
そしてフォークをかじり噛み砕く。
「聞いてるんだろ?ユー…アリアはボクのモノだから、いくらボスに監視の命令を貰ってても手出したら…」
扉越しに笑うユー。
「安心してください。私はアリアには興味が有るだけですから…。」
「ムカつく…それてっアリアに好意があるてっことだろ。」
ユーは含み笑いをしてアリアの元へと足を進めた。
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