虫への恐怖


クワガタの様な虫の大群が空から襲来する。

小動物位の大きさの虫で皆の腕や目…身体を傷付けていく。

小松とウォールペンギンは唯一トリコに守られ無傷だった。

「あ…いや…来ないで…」

目の前の虫は容赦なく恐怖するアリアを襲う。

「アリアさん!くそっ…退け!」

滝丸はアリアを助けようとするも目の前の虫が邪魔で助けることも出来ない。

虫はアリアに飛び付くとガードした右腕をハサミで切り放し苦痛と恐怖を植え付ける。

「いあああーー!!」

アリアは完全に取り乱してしまい…その間にも虫は身体の中に入り込みえぐり、身体を貫通する。

「アリア!!フライングフォーク!」

トリコは左手をフォークの形にし思いっきり振り下ろすとフォークの形の刃がアリアを襲う虫をはね除けた。

アリアの体の特性上この程度の傷なら勝手に治してくれるが痛みが走ることには変わりはない。

虫たちはまだまだ迫り来る…その上中空から虫に掴まり此方に近づく三人の男。

トリコは目を見開きまるで予期していたかのように叫んだ。

「来たな…!美食會…!!」

三人の男は降り立つとリーダーであろうおかっぱの背中に昆虫の羽を付けた男がトリコに近づくとニヤリと笑う。

「ふふ♪君がトリコかぁー」

「!?」

トリコに抱きついたとたん¨さよなら¨の言葉と共に腹を貫いたのだ。

「!?」

「ありがてぇ…いきなり間合いに入ってくれるとは…歓迎するぜ。接近戦なら俺の方が挨拶しやすい」

トリコは腹筋の力で貫いた男の手を封じた上で右腕を振りかぶり顔面向かって殴りかかる…しかし、男の口から謎の生物が見えたの為に手を止めるとその生物はトリコの右手を凍らしたのだ。



ギュアアアアアーー!!!



その時と同じく彼らの頭上から落ちてきた大きなペンギンにより地面が割れて下に落とされる。

どうやらウォールペンギンの両親であろう…子供を取り戻しにきたのだ。

落ちた場所を見渡すと近くには大量の食材が氷で覆われたグルメショーウィンドウが見える……そう、これが溶け出し¨センチュリースープ¨が生まれるのだ。

「この下に…センチュリースープが…!小松!アリア!先に行け!ここは俺達が食い止める!」

「はい…!行きましょう!アリアさん!」

トリコの言うとおりに小松は恐怖するアリアの手を握り地下へと下りる入口へと向かった。





地下へと下りるとそこにはマスクの男がいた。

マスクの男はこちらを振り向くと小松は¨わあっ!!¨と大声を上げると同時にこちらに走り出し猛スピードでこちらに突進してくる。

「おわあああ!!ごめなさ…!!…え?」

なんとマスクの男は小松達を走り去り後ろに立つと後ろから蚊のような虫がこちらに飛んできておりそれを両手で潰した。

「こいつのノッキング法は知らねーや」

男は手のひらに付着した蚊の死体を振り払いながらマスクを取ると叫ぶ小松に静かにするように言った。

「静かに…喋らないほうがいい、この大陸から帰れなくなるぞ」

アリアのよく知る緑髪のリーゼントの男はそう言った。

しかし、今のアリアは完全に恐怖で頭が上がらずその人物が誰なのかも分かってはいなかったのだ。

男はメモを取り出すと小松に見せる。

¨そのスーツには盗聴機が仕組まれている¨と汚い字で書かれており、依頼主が付けていたらしい。

その上なんとスープがないという事が知らされ、スープが無い事が依頼主にばれれば自分たちは置き去りにされ二度と帰れなくなるぞとも…。

小松は信じられないあまりアリアを置き去りにしてスープがある場所に掛けるも…そこには一滴も存在していなかったのだ。

絶望する中、いきなり知らない男が乱入してきて大声で叫ぶ。

「スープが何処にも…」

リーゼントの男はその男にノッキングをして動けなくする。

「喋りすぎだ……。ふぅ…危うくスープが無いてっことがバレるとこだったぜ」

なんと自分で止めておいて自分でばらしたのだ。

「「…!!??」」

二人して驚くももう手遅れだった。




メモの汚い字で謝罪の文を見せていたが小松は¨もう要らないですよね?¨と呆れたように言うと。

「ああ、すまんね。」

「ところであなたは…一体?」

「俺の名前は鉄平!¨食の再生屋¨だ。君は?」

小松はちょっと失礼な事を思いつつも自分の名前を名乗ると鉄平はアリアの方を見やる。

「そこの可愛いお嬢さんは?大分怯えてるけど…」

鉄平はうつ向いている為かアリアだと気付いておらず彼女の元に近づく。

「君、大丈夫か?俺がいるからもう安心だ!ほら…顔を上げて…てっ……アリア!!??」

アリアの顔を見ると驚くなり抱き締めた。

「ちょっ…鉄平さん!?」

小松は慌てるなか鉄平は怯えるアリアの頭を撫で¨大丈夫¨と何度も囁く。

「て…鉄平…?」

「俺だ…もう敵は来ない、虫なんてものはもっと来ないさ。だから、落ち着いて…。」

鉄平はアリアを落ち着かせている間小松に話をする。

どうやら鉄平は依頼でグルメショーウィンドウの調査に来たようだかグルメショーウィンドウの食材はもうこの世にはない絶滅種らしく、幾ら凄腕の再生屋の鉄平といえど再生は難しい。

「ねぇ…小松さん…あの子小松さんを呼んでる…。」

アリアは指差すとその方向にはさっきのウォールペンギンの子供が小松の方へ向かって歩いてくる。

「どうしたんだお前?せっかく親と会えたのに何でここに!?」

「そいつは…ウォールペンギン!絶滅危惧種じゃねーか」

小松はそっとウォールペンギンの子供の手に触れると不安そうに何度も鳴く姿はアリアの心を痛める。

「小松さん…その子の両親はもう…。」

「そんな……。…!?どーした?」

必死に鳴く姿とは裏腹にふと泣き止み…小松の後ろを目を輝かせて見つめていた。

小松は振り向くと…そこには…一筋の希望が見えたのだ。

スープの在りかを教えるもう一つの道標、オーロラが…。

「まだ…スープがあるぞ!」

鉄平はグルメショーウィンドウを保護しに上へ二人は今にも崩れ落ちそうな場所の中でスープを探し始めた。





「あった…アリアさん!ありましたよ!」

小松はほんの少しだけたまっていたセンチュリースープをグルメケースに入れて喜びの表情を浮かべる。

センチュリースープは液面からオーロラが見えるほどに透明で…百年に一度しか取れないのが分かる程に美しいスープである。

「良かったね…小松さん…。」

「はい…これでトリコさんも滝丸くんもマッチさんも…皆……いっ…!」

「小松さん!?」

歓喜する小松は倒れてしまう…喜びではなく…痛みによって…。

倒れた小松の後ろから現れるハエに乗った小さなGTロボが直ぐ様スープを奪いその場を離れてしまうのがアリアの視角に入る。

「アリアさん…スープが…皆の…希望が…」

「小松さん…待ってて…私が必ず…」

アリアは小松を置いてGTロボを追いかけた…もう虫が怖いなんて言ってられない…勿論怖い事には変わりないけれども今はスープが第一だった…皆の希望のスープを何としても取り返さないと思う一心で身体は動いていたのだ。










そしてアリアは消息を断った。

最後にアリアが見た光景はハエに乗ったGTロボが六本の腕を持つ大男を見たのが最後だったのだ。










あれからトリコ達は瀕死の重症を負いながらも奇跡的に手にいれたスープを小松に飲ませ小松がセンチュリースープを作る事を決意したのだった。

鉄平はアリアの事が気になり夜も眠れなかった。

あれからもう一度アイスヘルまで行き捜したが…見当たらない…。

可能性が有るとすれば…美食會に拐われたか…それとも…。

そんな鉄平の元にアリアが帰って来たのはアイスヘルを脱出してから二十日後の事だった。










二十日前…。

「お目覚めですか?」

「え…?どうして…?」

アリアが目覚めた場所は広すぎるベットの上…部屋は綺麗に整理されているが赤黒い壁が不快感をもたらせる。

「それは¨何故生きているのか¨という質問ですか?」

目の前の大男…アリアの前に立ち塞がった六本の腕を持つ男。

「あなたは…何者なの?」

「私は美食會でギャルソンをしております。アルファロでございます。」

「私は…どうして拐われたの?」

アルファロは頭を上げるとアリアのものである二本の包丁を取りだしニヤリと笑う。

「貴女の情報は予々ユーから伺っておりますよ。凄腕の食材と心が通わせられる料理人と…。そのような逸材がわが美食會に入ればきっと三虎様も喜ぶでしょう。」

美食會。

トリコ達を傷つけた人達…断固としてお断りだった。

「嫌です。貴方がどう言おうと私は揺るぎませんから…。」

きつくアルファロを睨み付けるもアルファロはびくともしないのだ。

「ふふっ…まぁ…始めの内だけですよ、そうやって強気でいられるのは…。」

アルファロはアリアに赤いドレスとエプロンを渡すと¨ボスがお待ちですから御早めに¨とだけを言って部屋を後にした。





残されたアリアは一人涙を流した。

「美食會は皆を傷つけた人達…私は…そんな人達に従うなんて…いや…皆の所に帰りたいよ…。」















 

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