アイスヘル


アイスヘル。

寒いなんて言葉が比にならない程に冷たい世界だった。

「皆行くぞ!」

船で現地まで来たが今から氷の山を上り更に進むらしい。

¨ライタースーツ¨という超防寒具を着て寒さをしのぐのそうだがこの寒さ…無いよりかはマシな位にしかならなかった。

アリアはライタースーツにジャケットとスカートを上から着て身仕度をするとふとマスクの男が気になり探し始めた。



探しているとアリアは¨ある生物¨に直面して体が硬直する中滝丸が声をかける。

「アリアさん、あまりウロウロしては危ないですよ。…アリアさん…?」

アリアは固まったまま動かない…。

滝丸はアリアの肩を掴むとアリアは滝丸の後ろに直ぐ様隠れた。

滝丸は一瞬敵かと思い身構えるが、そこには一匹のゴキブリがいただけであった。

「アリアさん…ただのゴキブリですよ。」

「滝丸くん…お願い…助けて…。」

アリアは滝丸の袖口を強く握りしめ身体を震わせ目には涙を浮かべており、滝丸は思わず驚いた。

「ちょっと待って下さい。」

滝丸は駆除しようと前に出るとゴキブリは真っ二つに切られ…その場に紙切れのように落ちる。

「あ…オジサン。」

「お前の連れはこの程度で怖がるのか?」

オジサンと呼ばれる男…酒場にいた傷だらけの男が鼻で笑うとアリアに近づく。

「あ…ありがとう…ございます。」

「お嬢ちゃん、俺はマッチ。グルメヤクザの副組長をしてる。こんなガキよりは頼りになる男さ…。」

とだけ言って立ち去ってしまった。

滝丸は言い返したい気持ちもあったが今はアリアが気になりソッと抱き締める。

「アリアさん、大丈夫ですか?凄い…取り乱してましたよ?」

アリアは落ち着きを取り戻してから言葉を口にする。

「さっきはごめんなさい。私実は…虫だけは駄目なんです…。あれだけは昔から…心が通わせられなくて…心が分からなくて…怖い…ん…です。」

震える身体は嘘をついておらず滝丸はアリアの頭を撫でると¨大丈夫ですよ¨と囁いた。

「それにアイスヘルじゃ虫なんて凍えて死んでしまいますよ。さぁ、ヘリに乗りましょう。」

アリアは小さく頷いた。




ヘリで途中まで山を登りあとは自力で登るのだ。

第一陣としてトリコさん先導で風に向かって皆が続いていく…アリアは滝丸の後ろを付いていく。



コォォォォォーー!!



冷たい空気が吹き荒れ体感温度ではマイナス八十度位だろう…皆が震え息が凍る。

寒さに耐えられずその場で動かなくなる者、氷のトゲの様なモノが襲いかかり命を落とす者、いくら美食四天王がいたとしても救えない命はいくつもあった。





アリアは昔からグルメ界にいた為、戦闘はしなかったものの異常気象という環境には慣れているため、アイスヘルの様な寒いところはもう慣れていたのだ。

皆はそんな彼女を見て唖然とする。

「お前スゲーな…。小松なんて今にも死にそうなのによ…。」

トリコは必死にトリコの背中にしがみつく小松を指して驚いていた。

「はい、私はこれくらいなら慣れっこです。それよりここら辺で休みましょう。小松さんが…。」

「ああ、そうだな。」

トリコはナイフで雪を切り出し溝を作り皆はそこに飛び込んだ。





トリコが上で見張りをしている中。

「滝丸くん…大丈夫?」

「はい、大丈夫ですよ。これもトリコさんが護ってくれたお陰です。」

滝丸はミルクを温め小松に手渡す。

「ありがとうございます。」

「これ…オジサンの部下の人に渡してきて貰えますか?」

アリアに手渡すとアリアはグルメヤクザの人の所に手渡しに行った。

「あの…どうぞ、温まって下さいね。」

「ああ、すまねぇな。」

部下の三人にミルクを手渡す。

「アリアだったか?ありがとよ。」

マッチはアリアに笑むとアリアもつられて笑む。

「いいえ、お礼なら滝丸くんに…。私はただ手渡しただけですよ。」

「お前…虫は駄目だったのにヤクザは怖がらねぇんだな…。」

「だってマッチさんも他の皆さんも優しい人だって思うから…ですかね…。」

マッチは目を見開くと照れ臭くなり目を反らす。

「お…お前はところでどうしてこの依頼を?」

「私はお金を貰って薬を買うためです。どうしても助けたい人がいるんです。」

「いいじゃねーか」

マッチはアリアの頭を撫でると部下の方を見る。

「俺達は飯も食えねぇスラム街の子供たちにスープを食べさせる為にさ…。俺も組長にそうしてハイエナから人間に戻れたんだ…恩はガキ共に返してやるのさ。」

アリアは声を漏らして笑う。

「どうした?」

「やっぱり優しい人です、マッチさんは。」

「そうか…じゃあ俺はトリコと見張り代わってくるさ」

手を振って去っていくマッチさんの背中にアリアは一声かけた。

「頑張りましょうね!」

「ああ、お互いな。」




それから皆はセンチュリースープのあるオーロラの下の山の入口まで向かい、その場所で夜を過ごす。

「わぁ…小松さん!可愛いペンギンですね♪」

「でしょ!この子親とはぐれてしまったらしいんですよ…。」

アリアと小松はウォールペンギンを可愛いがる。

その間、マッチは眠りにつき、皆は自分たちの依頼を受けた理由などについて話し合い笑いあった。





アリアは皆が寝静まろうとする中、見張りのトリコに声をかけると相変わらず笑顔で応えてくれた。

「トリコさんてっ変わってますね。¨自分が食べたい¨てっ理由でセンチュリースープを捕りに来たなんて…。」

「ははっ!そうか?お前…アイを助けたいんだろ?滝丸から聞いたぜ!」

アイとは愛丸のことであろうアリアは頷く。

「彼は私の命の恩人ですから…。」

トリコはマシマジとアリアを見つめるとニッと笑う。

「トリコさん?」

「お前…アイの好きそうな感じだな♪」

「あ…えっと…¨嫁に来ないか¨てっ言われました…。」

「マジで!!!???」

「はい、こっ…断りましたけど…。」

トリコは大きく笑う。

「今度アイに会ったら良いネタになるな…♪」

「と…トリコさん…あんまり愛丸さんを苛めないであげて下さいね?」

「いいんだよ、アイも俺の事デブてっ言っー!!」

トリコは笑いをふと止めてー怖い顔をしたのだ。

「トリコさん?」

「アリア…気を付けろよ。」

「……??」



ドォォォオオオオトオオオンーー!!!!



大きな爆発音が山に響き渡る。

それに気付き皆が起き上がりトリコの元に駆けつける。

「今のは…?」

「すぐに用意しろ…!敵が…くる!」

トリコの言葉は重々しく響いた。



今から戦闘をするのだ…。

これはセンチュリースープの奪い合いになると…。



 

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