病食主義
食の幸福¨グルメ教¨を忠実に守るグルメナイト。
その中のリーダーである愛丸に気に入られアリアは彼の専属料理人に¨愛丸の病気が楽になるまでの間¨なることになった。
アリアの存在は始めはグルメナイトの皆から怪しまれる事はあったが今となっては一人の料理人として仲良くしている。
自然物しか食べられず狩りは簡単な物が多いが量がとても少ないという点に困った。
アリアを専属料理人として雇ってから一週間の事だった。
アリアの元に倹約イワシを持って滝丸が現れた。
彼は髪の毛で片目を隠したターバンを巻いていてアリアとは歳も近く何かと話が合うことがあった。
「アリアさん、ここに倹約イワシおいときますね。」
「ありがとう、滝丸くん。」
「あの…アリアさん。」
「…?どうしたの?滝丸くん。」
ある日滝丸くんと二人きりの時、彼は悲しい顔をして唐突な言葉を口にしたのだ。
「この事は愛丸さんには内緒にして欲しいのですが…彼はもう長くは有りません。」
「…!?どうして?」
「愛丸さんは変わった体質で人の病気を食べる¨病食主義¨の人なんです。僕も愛丸さんに病気を食べてもらいこうして生きていられるのです。」
「もしかして…彼の病気は不治の病てっ事なの?」
「はい、最近はアリアさんの料理のお陰で体調が嘘のように良くなって来ていますが…次、悪化したときが…多分…。」
「そんな…。」
「だから僕はお金を貯めて¨どんな病も治す薬¨を買いに行くんです。」
「滝丸くん…。」
「明朝にでも出発する予定です。くれぐれも皆には…内緒にしていて下さい…。」
アリアは頷いた。
その日の夕方。
「あの…愛丸さん…容態はどうですか?」
愛丸のテントにソッと入るアリアは元気そうな彼を見てホッとする。
愛丸は今まで男だけのメンバーだったので毎日メシを作ってくれているアリアは何かと意識してしまう点があった。
「ああ、良くなったよ。これもアリアのお陰だな…。」
「何だか…褒められると照れますね…。」
恥ずかしがる彼女もまた愛らしい。
「あの…愛丸さん、報酬の件なんですけど…。」
愛丸は自身あり気に自分の胸に手をおく。
「何でもいいぞ、俺が可能なら。」
「やっぱり…いいですよ。私の命の恩人ですから…やっぱりこれ以上の礼など有りませんし…。」
「……。本当にいいのか?」
アリアは頷くと愛丸の手を取り微笑む…綺麗な肌が重なる。
「私はそれだけで充分ですよ。むしろ、私の方が何かお礼をしないといけない位ですよ。」
「いいや、俺はアリアの笑顔だけで充分だ。お前が俺の側で笑ってくれているだけで。」
「愛丸さん…。」
「ところで…アリアは何時、私の俺の元を旅立ってしまうんだ?」
愛丸はアリアと出来るだけ長く居たいと思っていた…しかし、彼女の答えは残酷だった。
「愛丸さんの容態もよくなって来てますし…早ければ三日後には…」
「三日だって…!?」
アリアは頷き愛丸の手を放そうとする。
しかし、愛丸はその手を掴む。
「あ、愛丸さん!?」
「なぁ…アリア、俺の嫁に来る気はないか?」
アリアは首を横に振る。
「ごめんなさい…まだ、知りたいことが沢山あって…それに、まだ私を必要としてくれる人は沢山いるから…」
「そうか…」
「愛丸さん…。」
「気にするな、お前の探求心が底をついたらか、俺の病気が完治すればもう一度同じ事を言うさ。」
「その時は…本気で考えてみますよ。」
「ああ、頼んだ。それと…もう一つだけ頼まれてくれるか?」
「え…はい。何ですか?」
「実は…。」
その日の夜、愛丸の病気が悪化した…。
アリアはあくまでも料理人、医者ではない…このまま弱っていく彼を見守るしかなかった。
明朝、滝丸は馬に跨がりかけようとするとアリアも身支度を整えて馬に飛び乗る。
「アリアさん、愛丸さんを宜しくお願いします。
てっ…アリアさん…!?」
「滝丸くん、一人じゃ無茶だから私も着いていく。それに愛丸さんに頼まれたの¨滝丸を宜しく¨てっ」
「愛丸さんが!?」
アリアは頷くと滝丸の腰に腕を回ししがみつく。
「だから…行こう。私も彼を助けたいの。」
「分かりました。行きましょう…。」
馬は二人を乗せて駆けた。
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