グルメナイトの愛丸
アリアはグルメ界の入口に来ていた。
自分の育ての親を探す為に。
しかしグルメ界と言えども大きすぎる面積、それに昔は育ての親の虎に守られていたため、今の彼女では無理があった。
「何時になったら会えるのかな…パパ…ママ…。」
「オマエ…は…アリアか?」
機械混じりの声に振り向くと鳥人間のような出で立ちの¨何か¨が居たのだ。
私はその生物に見覚えがあった…。
昔グルメ界にいた頃に同じ形をした者に会っているがその者とは明らかに別人だった。
「オマエにハまだハヤイ。タチサレ…でないト死ぬゾ?」
「それは知ってます…だから強くなって必ず行く…」
生物は¨フン¨と鼻を鳴らしグルメ界へ入っていく。
「待って下さい!」
「ナンダ?」
アリアはその生物の手を触れると小さく笑んだ。
「機械…だから心が通じないんだね…。スター…。」
「サァナ…ダガ私はオマエのヌクモリヲカンジル事ガデキる。アイカワラずウルワシイな…。ソウダナ…あとジュッカゲツ…位か…オマエをムカエニいク。」
スターは手を離しグルメ界へ入る。
「あ…スター…。」
一人残されたアリアは空を仰いだ。
十ヶ月後…迎えに来る…?
「私を何処へ連れて行くの…?スター。」
アリアはあれから一日ずっと入口にいた。
どうしても彼が心配で堪らない…それに胸騒ぎがしたのだ。
雨が身体に当たる…いや…この雨はただの雨じゃない…毒だった。
きっとグルメ界に近いからであろう、異常気象がそのまま流れて来ているのだ。
仕方がなく来た道を急いで引き返した。
身体は酷く痛み今にも倒れそうな程に辛い…悲鳴を上げ、それを治す為に細胞が超回復する身体はアリア周りを被うように煙をあげる。
溶けた身体が自分の回復力に付いていけていない。
「ああ…あ…痛い…。」
思わずその場に倒れ込んでしまった。
雨はまだ身体を侵す…指一本動かすことも出来ない身体を誰かが抱える。
「あ…ありが…と…う…」
「なんて回復力だ…。」
アリアの視界には黒髪の青年と位にしか分からないまま気を失った。
目を覚ますと広いテントの中で服は目の前の男の物と同じブカブカのシャツを着ていた。
身体はダメージが大きすぎたのか…痛みで痺れたように動かない。
「やっと目が覚めたか?」
「…んっ…あ…。」
動けない身体に何かの液体をスプーンですくい上げるとアリアの口に運ぶ。
口にしたとたんに身体がうっすらと動かせるようになるがまだ充分ではない。
「それは痛み止めだ…あと一時間もしたら動けるだろうけど無理はしない方がいい。安心しろ、取って食おうなんて思ってないからさ。」
「あ…はい、ありがとうございます。あ、私、アリアと言います。先程は助けて頂きありがとうございました。」
¨愛丸¨と名乗る男は黒髪の後ろに長い三つ編み、目元には左右対象の三本の爪の様な赤色のラインが入っている。
「いいよ、俺は人を助けるのが好きなだけさ…。
それにアリアみたいな可愛い子が倒れてるのにほっとけないだろ?」
「あ…あの…何かお礼しないと…。」
「いや、いいよ。俺はアリアに会えただけで嬉しいよ。それと…さっきアリアがずっと¨スター¨てっ言ってたけど…誰なんだ?」
「え…?」
アリアの困り顔に溜め息をつくと愛丸は息なり血を吐いたのだ。
「…!?愛丸さん…!?」
アリアは動けない身体を必死に起こし、愛丸の背中をさする。
「はー…はは…まさか…こんなに早く発作が来るとは…無理し過ぎ…ゴハッ…ゴホッゴホッ…!」
「愛丸さ…痛っ…!」
「愛丸さんっ!!」
アリアも身体の痛みに耐え兼ねうずくまると仲間がゾロゾロと入り愛丸を連れて行く。
そのうちの一人がアリアの身体を抱え布団に戻す。
「あ…あの…!愛丸さんは!?」
「安静にしていれば大丈夫な筈です…。貴女は今は寝ていた方が先決ですよ。」
アリアは片目を隠した彼に毛布をかけられそのまま眠りに落ちた。
俺は病気…いや呪いか…?まぁ…良くないモノを持っている。
普段から寝込んでいたが今日はたまたま少し容態が良くなり一人で馬に跨がり野を駆けていると息なり馬が方向を変えて猛スピード出掛けたのだ。
「おいっ!?どうしたんだ!」
何せ病み上がりの身体、止める事が出来ずに馬の成すがままだった。
ヒヒーン!!
安全な場所で馬が急停止すると俺は毒の雨の中で倒れる煙を全身から上げる人形の生物を見つけたのだ。
「なんて回復力だ…。」
いいや、その時は細胞が超回復しており、また男すらも分からない程に身体が溶けていて人間なのかも定かではなかった。
俺は毒雨に当たらないように身体を布で纏い生物を抱え上げると急いで馬の元へ…そして仲間の居る所へと急いだ。
俺は急いで客人用のテントを立て生物を寝かす。
俺も病人なのにどうしてだか目が離せずずっと側に居た…俺は目の前の変わった生物に気が気で無かったのだろう…。
身体は時間が経つにつれて回復していき身体の煙も消えていく…。
「なぁっ…!?」
俺は…やってしまったと思った…。
目の前の生物は女であり、服は毒雨のせいでほとんど溶けていたのだ…つまり、裸の女と言うわけだ。
今は俺と彼女の二人だけだが目が覚めてしまえば大変な事になる…!俺は急いで自分の予備の服を取りに行き服を着せた。
彼女の白い肌は何故かとても魅力的で傷付けてはいけない…神秘的なモノに見えた。
「スター……まっ…て…。」
「…?スター…?」
人の名前だろうか…ずっと名前を呼び続けている。
痛み止めを作っている時…その名前はずっと呼ばれていた。
一体誰の名前なのだろうか…?
「うっ…。」
俺は目を覚ますといい臭いが鼻を刺激する。
身体を起こそうとするとグルメナイトの仲間の月影が止める。
「愛丸さん!まだ、動いてはいけません!」
「愛丸さん…良かった…。あれから二日も眠り続けてたから…。あの…身体が良くなるようにてっ作ったのですが…。」
「アリア…。」
アリアは俺の隣に座り粥を俺の口に運ぶ。
まるで嫁さんみたいな事をするな…と思いながら俺は口に含むと優しい味と何処か身体が安らぐ…なんて旨い料理なんだ。
「旨いじゃないか!アリアが作ったのか?」
「あ…はい、気に入ってくれたのなら嬉しいです。」
俺はアリアの手を取り¨もっとくれ!¨と言ってお粥をかっ食らう。
その姿を見てアリアは¨良かったぁ¨と微笑む。
他のグルメナイトの皆はアリアの料理で病弱なリーダーが治った事に驚く。
「なぁ…アリア。お前俺のの専属料理人になってくれないか…?」
「え…!?」
アリアの驚く姿を見て俺は少し無理なお願いをしてしまったようだ。
「すまない…無理にとは言わない…俺の体調が完璧に優れる迄でいい。礼は必ずする。」
「ですが…私に務まるかどうか…。」
「なぁに…お前なら出来るさ、俺が保証する。」
アリアは少し考えた後に¨治るまでなら¨と言ってくれた。
こうして俺とアリアの短い生活が始まる。
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