心愛と信愛 | ナノ

ヒカリ(山口夢)


俺はカゲだ…。

石垣さんみたいに皆の頼れる存在でもなければ
御堂筋みたいに強くもない。
だが水田のように威張ることもしない。

真っ暗なカゲだ…。

「すみません…山口さん…。」
「いいや、いいんだ。」
また一人部員がやめてしまった。

「山口くん…?」
俯く俺に話し掛けてくれた存在。
「由香ちゃん…。どうしたんや?」
由香は不安そうに俺の様子を伺い口を開く。
「大丈夫…?顔色悪いよ…。えっとね…御堂筋くんが呼んでたよ…。」
優しく微笑んでくれる彼女は¨じゃあ、頑張って¨とだけ言って去ってしまった。
由香の背中を呆然と眺め胸を痛める。
由香は学校一の美人と言っていい、部員の半数は彼女目当てだ。


石垣さんは俺が部活を始めた理由ならば
由香は俺が部活を続ける理由だ…。

由香はヒカリだ…俺が触れてはいけない存在なのだろう。










それでも…俺は…お前がっ…!!









「由香!!!」

何をしてるんだ…俺は…!

「山口くん…?」

「なぁ…俺は…」

もうこうなった以上…

「俺は…由香のことを…」

唇が緊張で震えて言葉が出てこない。

「私…?」

「す、…。」

由香は首を傾げて俺の言葉を待っていた。

俺は大きく深呼吸をして口を開いた。






「凄く綺麗なヒカリや!俺を照してくてる温かいヒカリなんや!」

俺は思っていた言葉とは違う言葉が出てきて思わず口を手で塞ぐ。

「ふふっ♪山口くんてっ変わってるね。」

「え…?」

由香はクスクスと笑い俺の元に近付くと耳元に口を近付けささやいた。

「私のヒカリは石垣先輩なんだけど…その次は山口くんなんだよ?」

「由香ちゃん…それって…。」

「一年生の時からずっとみてた…まぁ…共通の人に憧れてたからかな…?山口くんは頑張り屋さんで何処と無く努力家の石垣先輩に似てたから…。」

「俺は石垣さんみたいに輝いとらへん…。
俺はカゲや…真っ暗で目立てない…カゲなんや」

由香はツボにはまったように笑うと両頬を手で包む。

「駄目、私のヒカリは山口くんなんだよ?
もっと自信を持って…!そんなんじゃ…ホントにカゲになっちゃうよ?」

「由香ちゃん。すまん…頑張ってくるわ。
あ…そや、もし…もしもウチの学校が優勝したら…そのときは…」

由香は大きく頷いた。

「そのときは喜んで…♪」



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