心愛と信愛 | ナノ

無力


屋上で二人。
由香ちゃんは相変わらず泣いていた。
雪ちゃんは飲み物を買いに今はいない。
オレは由香ちゃんの背中をさすってあげる。

オレはこんなに苦しむ彼女を初めて見た。
どうしてあげたらいいのだろうか…。

自分の弱さをさらけ出されているみたいで情けない。
まるであの時のレースのオレだったら逃げれたのかな

「由香ちゃん。オレで良ければ聞くよ?」
オレは由香ちゃんの涙を手で拭う。
「葦木場くん…。」
由香ちゃんはさらに泣いてしまった。
オレは彼女にしてあげられる事はただ胸を貸してあげることしか出来ない。

「葦木場くん…あのね…」
由香ちゃんは途切れ途切れに言葉を発する。

彼女の家は電話をかけたあの日に火事にあって両親が亡くなった。今は親戚の家にいてそれで転校してきたらしい。
オレが馬鹿みたいに舞い上がっていたあの時に。

「ごめん。由香ちゃんオレ…。」
「気にしないで。私が勝手に泣いちゃっただけだし
それにありがとう。気持ちが落ち着いたよ。」
オレは首を大きく横に振る。
由香ちゃんは少し笑ってから先に行っててほしいと言われたからオレは先に教室に向かう。


一人残された由香の元にべったペットボトルの水を持った黒田が現れる。
「葦木場は?」
「先に教室に戻って貰ったんだ。」
ペットボトルを手渡す彼にお礼を言って一口口に含む。
「あのね黒田くん。私は葦木場くんに…」
彼女の言葉に黒田くんは目を見開き笑う。

「そうか…葦木場の奴やるじゃねーか。」
黒田は小さく呟いた。

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