心愛と信愛 | ナノ

弱さ


オレはケータイを手に由香ちゃんに電話をかける。
「もしもし?どちら様ですか?」
由香ちゃんの声に心が踊る。
「由香ちゃん!オレ!葦木場!」
「あ…葦木場くん!?」
俺はただただ嬉しくて部屋で一人舞い上がる。
けれども由香は少し慌ただしくて余り話が続かない。
どうしたの?てっ聞いたら
話せないからまた今度話すと言われ通話が切れる。

胸の中で不安が渦巻く。
なんだろう…この嫌な感じは…。
俺はケータイを片手に何事も無いことを祈った。


あれから数日が経ったある日の朝。
オレは校門前で焦る雪ちゃんを見かける。
「雪ちゃんおはよー。どーしたの?」
「由香 ちゃんが!」
「え?」
雪ちゃんと一緒に教室に向かうと
教室の一席で佇む箱学の制服を身に纏った彼女がいた。

「由香 ちゃん…?」
名前を呼ばれてこちらを振り向くと
「あ、葦木場くん♪おはよー。」
優しく微笑む彼女を見てオレは思わず駆けていって
思いっきり抱き締めた。
「葦木場くん!?」
「会いたかったよー!」
雪ちゃんは呆気に取られ周りもどよめく。

そう由香ちゃんは美人だし転校生で注目の的だ。
そんな彼女に抱き付くなんて付き合ってるも同然だ。
「お前…いきなりそれは…」
雪ちゃんは溜め息を付く。
「ちょっ…葦木場くん恥ずかしいよ…」
由香ちゃんも焦った様子でオレの背中を叩く。
「あれからどうしてたの?オレ寂しかったんだよ」
オレは由香ちゃんに笑顔で話す。
周りはそんな俺達を見てさらにざわめく。

でも由香ちゃんの顔は何故か曇る一方だった。
その上涙まで溢れていた。
「由香ちゃん…?」
「ごめんね。なんでだろうね…。ごめんね。」
雪ちゃんは由香ちゃんの手を握り
「行くぞ。勿論お前ェもだ。」
オレと由香ちゃんを連れて人気の無いところまで歩く。

やっぱり何かあったんだ。
オレは由香ちゃんのか弱い背中に胸を痛めた。

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