心愛と信愛 | ナノ

オクビョウ


あれから福富くんとは仲良くなって
朝のローラーの時間は一緒にいるようになった。
何時だって話は途切れない。
なんて楽しいのだろうか…。
「福富くん…!あのね…。」
「どうした?」
「と、友達になって欲しいんだ!」
「俺は元からそう思っていたが?」
「え!?あ!そ…そうだよ!私達は友達だよ!」
慌てる私に微笑む福富くん。
「なら花佐部。」
「ん?」
「兄さんから映画のチケットを貰ったんだが
良かったら一緒にどうだ?」
私は驚きで黙り混んでしまう。
「どうした?」
「あ、新開くんは?」
「始めは新開を誘おうと思ったんだが断られてな。」
「そっか…分かった、一緒に行こ」
自信満々で言っているものの内心戸惑っていた。
私が一緒に行っていいのかな…?
だって二人きりになるんだよ?
それてっデートだよ…?
いや…今は友達だ…何を考えてるの?
「良かった。なら明日の9時でいいか?
……?花佐部?」
「あ!ご…ごめん。なんて言った?」
我に返ったときにタイマーが音を立てる。
「明日の9時でいいか?」
「あ、うん!いいよ♪」
「なら、それで…どうした?
早く友達のところ行かないといけないだろ?」
そうだった…何時ものことだ…。
「あ!うん、今日もありがとう。」
「ああ、こちらこそありがとう。」
私は福富くんに手を振り部室を出る。

少し歩いたところで声を掛けられる。
「やぁ、由香ちゃん。」
「あ…新開くん。今日も福富くんのお迎え?」
「いや、今日は君と一緒に行こうと思ってね」
「大丈夫だよ♪私には莉沙が待ってるし
福富くんのところ行ってあげて?」
新開くんを後に教室へ向かおうとすると腕を掴まれる。
「新開くん?」
「なら、今日この後空いてる?」
「空いてるけど…。」
新開くんは微笑むと腕をはなす。
「じゃあ、この後学校のカフェで落ち合おう。」
放された腕をまた掴み引き寄せられる。
「一人で来てね?君の友達いると話出来ないからさ」
「え…?あ、うん。」
私はなんだか嫌な予感がしたけれど断れなかった。

授業が終わり莉沙と別れた私は一人カフェへ向かう。
なんだか足取りが重い。
新開くんてっなんだか怖いな…。
「由香ちゃん♪こっちこっち♪」
カフェに着くと新開くんが手招きをしていた。
私は新開くんの前の席に座る。
「話てっ何?」
「いや…大した話じゃ無いんだけどさ
おめさんてっ寿一のこと好きなの?」
私は顔を真っ赤にし
「いや、ち…違うよ!そんな事っ…。」
新開くんは笑う。
「あははっ♪分かりやすいね、
それに緊張も解けてる。」
「え…?」
新開くんはメニューを手に取り私に手渡す。
「緊張してるおめさんと話しても面白くないからね
どう?なんか食べながらでも?俺が奢るからさ♪」
「あ、ありがとう。」
「ん、どうしたしまして。」
私はイチゴパフェ、新開くんはチョコバナナサンデーを
頼みメニューが来るまでは無言だった。

「由香ちゃんてっやっぱり寿一好きなんだね。」
「…!?えっと…。」
「ローラーの時、話途切れないだろ?
俺の時はこんなに途切れるのに。」
「あ、ごめんなさい。」
「いや、俺も無理に話をさせるのは嫌だからね。」
「あ…うん。」
「そういえば寿一に映画誘われたてっね。
寿一嬉しそうに話してたよ?」
「うん!それに友達になれたんだ。
福富くんと初めて遊びに行けるんだ♪
それで………。」
新開くんは食べながら嬉しそうに私の話を聞いてくれていた。
「それで……あ!私…ごめんなさい。
つい話しすぎちゃった…。」
「いいや、構わないさ。」
新開くんは私に紙切れを渡す。
「…これは?」
「俺のメルアド。次いでに寿一のメルアドも後で教えてあげるから。」
「え…福富くんのメルアドなんて…まだ早すぎるよ。」
「寿一もおめさんも抜けてるな。
当日はぐれたらどうやって連絡取るつもりだ?」
私は唖然とする。
「あ……ほんとだ…。」
新開くんは窓を見やるとケータイを触る。
「由香ちゃんやっぱり自分で聞きにいった方がいい。」
「え…?」
窓の方を指差す、そこには福富くんが居たのだ。
「ほら…何時までも待たせちゃいけないだろ?」
「あ…うん!ごめん…ありがとう!」
「どういたしまして」
新開くんは私に手を振った。

一人残された男は食べ終えた皿にスプーンを置いた。
「ほんと…可愛いな…由香ちゃん…。」
窓越しに映る兎の様な彼女の見て笑みを浮かべた。
「それにしても寿一鈍いなぁ…。
あんなに分かりやすいのに…。」


俺は思う。
彼女は¨オクビョウ¨だ。

好きな男の側に居たいのに近付けば近付く程怖がる。
やっぱり兎だよ可愛い由香ちゃん。。
君を寿一にあげるのはなんだか惜しい。




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