心愛と信愛 | ナノ

義兄(荒北夢)


「ふ…フクちゃん!?これは犯罪か何かカァ?」
「うむ、似てなさすぎるぞ!」
「でも、可愛いくねぇか?」
頷く三人。
「兄が何時もお世話になってます。
妹の福富由香です!」
深くお辞儀をする彼女を見てますます驚く。
「礼儀正しい所は寿一に似てるぞ」
「でも全然鉄仮面じゃネーじゃねぇな!」
囲まれて戸惑う彼女の間に兄が入る。
「由香は人見知りだ、無理はさせるなよ。」
「お兄ちゃん…。」
荒北は物珍しそうに見詰めるが
怖がりな彼女にはただの危険な人にしか見えない。
兄の後ろに隠れる。
「ヤベーな…こういう子を見てっとスゲー苛めたくなっちまう。」
「靖友、それは犯罪だぞ。」
「そーだぞ!荒北!」
「にしても…由香ちゃんが俺の嫁さんになったら
寿一は俺の兄貴になるんだよなぁ…。」
新開はパワーバーをかじりながら呟く。
「オレは別に構わんがオレはお前とは対等で有りたい。」
「寿一…。」
「待て新開。何時お前の嫁になった!?
それに寿一も少しは突っ込め!」
慌てて突っ込みをいれる東堂だが
「東堂、おめさんはどう思う?」
「おっ…俺か!?勿論可愛いが俺にはファンが居るからな残念だが選べんのだ。」
「ウゼー…。ゼッテェお前ファン食い漁る奴だろ。」
悩ましげに頭を押さえる東堂に対して荒北はかったるそうに呟いた。
「そんな訳無いだろ!俺はなこう見えて一途なんだぞ!荒北こそ…あぁ…荒北は一途だな…。」
「ワリーかよ!一途で!」
「いや、荒北。素晴らしい事だ。」
荒北は照れ隠しで自分の頭を触る。
「ちっーフクちゃんに言われっと気ィ狂うぜ。
てか!新開ィ!何口説いてんだぁ!?」
「靖友やきもちか?」
「バッー!ちげーヨ!」
新開は彼女に耳打ちする。
そして荒北に近寄り。
「荒北さん…。」
「なっ!何だよ…。」
荒北を上目遣いで見つめて
「怒っちゃ駄目です…。こ…怖いから…。」
「はぁ!?怒ってネーし!てか、怖いは余計だヨ!」
荒北は彼女を抱き寄せ笑う。
「オメーも新開に言われたからてっそんな事すんなヨ!
間違って喰っちっまたらどーすんの?」
「あ、あのっすみません…。」
「荒北。離してやれ」
「わーかってるヨ、フクちゃん。」
それを見た新開と東堂はニヤニヤ笑う。
「アイツ実兄の前で凄い事言ったな!」
「おめさん最高だな♪大好きだ!」
「ハァ!?オメーに好かれても、ぜっんぜん嬉しくネーよ!」
「残念だが荒北お前には無理だ。」
「フクちゃん!?酷くナァイ?」
「今ので由香が気を失ってしまった。」
「ハァ!?」

騒いでいると夜が訪れるのは早かった。
「おっ、もうこんな時間か」
「もうそろそろ帰らねばな!」
「ああ、途中まで送っていく。」
「ありがとよ寿一。」
三人は立ち上がるが荒北だけ動こうとしない。
「どうしたのだ?荒北。」
「いや…先帰っててくれヨ。
由香チャンに謝ってくるワ。」
「分かった。行くぞ東堂、新開。」
三人が部屋を出た所を見計らい彼女の部屋に入る。
荒北はスヤスヤ眠る彼女に鳥肌が立つ。
「あのよぉ…由香チャン。
その今日は悪かったな…。」
聞こえても居ないと思いながら話を進める。
「ま…なんつーか、ビビらせるつもりはなかったんだが…。そのっ…ワリーな…。でも本音には変わんネーよ。」
布団が軽く震える。
「あははっ…。」
「アア!?」
彼女は笑いをこらえていたのだ。
「オメー…!今の聞いて…!」
「でも…格好かったです。」
「バッー!誉めんなっ!それに…あんまりオレをバカにすっと襲っちまうかもしれねぇナァ?」
「あ…荒北さん…?」
「今はフクちゃんもあのバカ共もいねぇんダ
楽しまなきゃ損てっやつダロ♪」

その時扉の向こうから騒ぎ声がする。
「バカ、新開っ押すな!」
「もうちょっと寄ってくれ聞こえないよ」
荒北は扉をソッと開けると体重を掛けていたせいで勢いよく倒れる。
「ナァニしてんの?」
「あ…荒北…待て!これはだな新開がっ!」
「ん?おめさんも楽しく聞いてただろ?」
「もう何も話さなくていいヨ…。」

荒北は二人を追いかけ回し
福富は彼女の元に駆け寄る。
「どうだ?オレの仲間は。」
「素敵だね。」
福富は小さく笑い彼女の頭を撫でた。
「由香。」
「どうしたの?お兄ちゃん。」
「由香が良いなら構わんが
オレは荒北が義弟はどうかと思うぞ。」
「あははっ……。」
彼女は小さく笑ったのだった。



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