心愛と信愛 | ナノ

色鉛筆


「…?福冨くん…?」
「…!」
あまりに彼女を見つめていたのか…
花佐部に気付かれてしまった。

「誕生日おめでとう」
俺はプレゼントを渡す。
花佐部は思っても無かったのか驚いた顔をしたが
直ぐに満面の笑みに戻る。
「開けて良いですか?」
「ああ。」
花佐部はまるで子供の様に目を輝かせながら袋を開けていく。

俺の花佐部へのプレゼントは色鉛筆だ。
64色のカラフルな物だ。
先日雑貨屋で出会ったとき絵を見せて貰った
勿論、どれも素晴らしい絵だったが
一つだけ気になることがあった。

全てに色が無かったのだ。

偶然なのかも知れないが
きっと花佐部なら
もっと良い絵を描いてくれるだろう。


「あ…ありがとうございます。」
今までずっと笑みを絶やさなかった彼女が
笑みを絶やしたのだ。
「すまない…。」
「あ!いえ!違うんです!
ちょっと今日ははしゃぎ過ぎちゃって…。」
「そうか…。」
花佐部の様子が可笑しかった。
「あの…福冨くん。」
「どうした?」
「私…今日楽しかったですよ。」
彼女は今までの笑みとは違い
振り絞ったような笑みを浮かべる。
「福冨くんと映画みたり、お茶したり、ショッピングしたり…。とっても!楽しかったです!」
笑っているのに
とても辛そうな顔をしている。

俺はそんな花佐部が見ていられなかった。

「由香!」
「…!?」
気付けば抱き締めていた。
彼女の手すら握ってやれなかったのに…。

「…福冨くん…?」
「俺は…お前を…!愛している!
だから…そんな辛い顔をしないでくれ…!」
「福冨くん…。」
花佐部は抱き締め返してくれた。
そして彼女は泣いていた。



「ごめんなさい。」
花佐部は俺に残酷な答えを返した。




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