メルアドA
東堂は花佐部からのまさかの返事に
満面の笑顔になった。
「おっ…いいのか?」
「あ…はい。大丈夫です」
綺麗な桜色のケータイを握りしめ東堂に近寄る。
「そうか!そうか〜!俺は嬉しいぞ〜!由香!」
東堂はケータイを取り出して画面を開く。
俺達の視界にディスプレイが見えた。
しかし、東堂は何故か電源を切ったのだ。
「おや、電池切れになってしまったな…。」
「え…?」
ディスプレイが見えた時
バッテリーはまだまだ充分あった。
「荒北、代わりに交換してくれ」
「ア…悪ぃ、俺ケータイ忘れたわ」
「なにぃ?あの荒北がか?」
「忘れて悪いか忘れてヨ!」
すると新開が立ち上がりケータイを取り出す
「なら、俺が代わりにやるよ」
「「勉強しとけ!!」」
二人は言葉を重ねた。
「仕方ねェ…。福ちゃん頼んだ」
「…ああ…。」
俺は席を立ち上がり花佐部の前に立つ。
「あ、福富くん!こんにちは♪」
「ああ」
「じゃあ、交換しましょうか♪」
「ああ、分かった」
こんな夢のような事があるのだな。
東堂と荒北には感謝しないとな…。
ケータイのアドレスが1つ登録された。
この小さな事が俺の心の中では充分に満たされていた。