心愛と信愛 | ナノ

全ての始まり


彼女は俺を見つめ首を傾げる。
「どうか…しましたか?」
「いや…怪我が無くて何よりだ。」
俺は彼女を立たせる。

「おめさん、荷物潰れちまってるぞ。
大丈夫なのか…?」
新開が道路にある潰れた袋を持ってきた。
「ん?これはアップルパイか?」
新開は潰れた袋の臭いを嗅ぐ。
「あっ…はい。」
「美味しい食べ物が台無しだな…。」
新開が肩を落とした。
「そっ…そうですね…。」
彼女も肩を落とした。

東堂が彼女の顔をマジマジと見つめる。
「あの…何か…?」
「結構可愛い顔をしているな…。
どうだ、この後ー「東堂ォ!!」
東堂の頭を殴る荒北。
「痛いではないか!!」
「テメェ何いきなりナンパしてんダァ!」
荒北は彼女を見る。

「…!!」
彼女は思わず俺の後ろに隠れる。
彼女にとって
荒北の見るは睨むと変わらないらしい。
「安心しろ、アイツは見た目は怖いが
根はいい奴だ。」
「福ちゃん、見た目怖いてっ酷くナイ?」
「「いや、当たってるぞ。」」
東堂と新開は声を揃える。
「チッ!テメェらァ!ちょっと来い!!」
「逃げるぞ!隼人!」
二人は荒北から逃げる為に
先に横断歩道を進んだ。
「福ちゃん、後から来いヨ!」
「分かった。」
荒北は二人を追いかける為に走り出した。

俺と彼女の二人きりになった。
「あの…」
「む、なんだ?」
「さっきはありがとうございました。
私はもう大丈夫ですから…。」
「そうか…。なら良かった。」
俺は三人の後を追うため
横断歩道を歩こうとした。

ガッー
彼女は俺の服の袖を掴んでいた。
「…?どうした?」
「あの…一緒に三つ目の横断歩道まで
歩いてくれませんか?」

その時の彼女の瞳の奥は
真っ黒だが美しく感じた…。
これが全ての始まりだったのだろうか…。







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