メリークリスマス!



街には恋人達や家族連れが溢れかえり、赤青色とりどりに輝く電飾に彩られた木々達が普段とは全く違う雰囲気を作り出し、行き交う人々には笑顔が浮かんでいる午後8時。


そう、今日は――クリスマス。


子供達の笑い声が聞こえ、いつもとは違う装いで聖なる夜を満喫するカップル。
そんな中を、大量の飲み物やつまみが入った袋をいくつも持ち、寒そうにマフラーに顔を埋めながら闊歩するジャージ姿の高校生2人がいた。



〜・〜・〜



「だーっ!さっみぃ!!」
「重いし寒いし最悪」


そうぶつぶつと文句を言いながら、私と平助は足を進めていた。
向かうは学校。
両手にはスーパーで買った大量の飲み物とおかし、おつまみ。
何故こんな状況かというと。


世間はお祭り騒ぎの今日、私達薄桜学園剣道部は1日試合だった。
クリスマスのクの字もない。
こんな日にまで試合なんて、土方先生は鬼だ。
そんなことを言っていた私達のもとに、近藤さんがやってきて…


「皆ご苦労であった!今日は夜から学校でクリスマスパーティーをやるから楽しみにな!」


こう告げたのである。
そしてこのパーティーは、近藤さんの宣言通り部活動終了後始まり、私達も参加していたのだが…。


「大体新八っつあんが飲み物担当ってのがそもそもの間違いだったって!」
「立候補したのは酒を買うため、か」


パーティーの場にあった飲み物は半分以上が酒だった。
パーティーに参加していた大人は近藤さんに土方さん、山南さんに左之さん。
そして飲み物担当に立候補したという新八の5人。
対して私達高校生は総司に私、平助と一君と山崎君。
加えて朝から料理を担当していてくれたらしい千鶴の6人。
この人数比であの酒の量はどう考えてもおかしい。
私達は未成年。
私達だけならいざ知らず、仮にも学校という場所で先生の目の前で飲める訳がない。
そんな状況で始まったパーティーは案の定開始2時間でジュースは底を尽きた。
当然私達は新八に文句を言うが、本人はすでに酔っ払い。
この報復は後日と皆で誓い、5人で買い出しじゃんけん。
そこで見事に負けたのが…私と平助である。
そしてどうせ行くなら、とお菓子につまみに色々頼まれて今に至っている。


「何が悲しくてクリスマスにジャージで、んな荷物持って…」
「私は平助の方が荷物軽いことが不満」


どうして私の方がペットボトルが3本も多いんだろう。
普通に考えておかしい。


「いや、俺は真尋なら大丈夫だって信じてるから」
「…これが千鶴なら持たせないだろ」
「んなあったりまえのこと聞くなよな」
「………」


こうもあからさまに言われると腹が立つのは何故だろう。
明日覚えとけよ、と心で言いながら、見えてきた学校へ足を速める。


「平助、千鶴にプレゼントは?」
「ち、ちゃんとあああるよ」


急にどもりだした平助を見て、私はにやりと笑う。


「ヘタレ平助は2人っきりになっても中々渡せないに百円」
「な、なんだよそれ!」


ちゃんと渡すし!とムキになった平助を、「はいはい」と受け流す。
もう学校は目の前だ。


「大体真尋はどうなんだよ!」
「私?私は渡せるよ」


…多分、と心で付け加える。
日常なら大丈夫なのだが、こういう行事事で改まって…となると、未だに気恥ずかしさが残る。
この手のものが苦手なのは、いつまでも変わらない。
今年は…頑張りたいな。
そんなことを思いながら、私は校門をくぐった。



〜・〜・〜



「おかえり、ふたりとも」
「わざわざすまねえな」


買い出しから帰った私達を出迎えてくれたのは、総司や左之さん達とーー


「お前ら今来たのかぁ?遅かったじゃねえか!!」
「…完全に出来上がってんじゃねえか、新八っつあん……」


見事に酔っ払った新八だった。
この短時間でどんだけ飲んでんだ。


「悪いな、あれはもうほっといてやってくれ」


そう苦笑いを浮かべる左之さんに、思わず同情の目を向けてしまう。
酔いつぶれた新八の面倒はいつも左之さんだからな。


「我々も席につこう」
「そうだ一君の言う通り!千鶴の料理まだまだあるからな!」
「平助ってそればかりだよね」
「平助君、そんな慌てなくてもお代わりもあるから…」
「千鶴みたいな嫁が欲しいよね、山崎君」
「…何故俺に言うんですか」


一君の一言で、再びパーティーを楽しみだす私達。
今年は千鶴が生徒として参加しているからかな。
いつものパーティーより盛り上がってる気がする。


「クリスマスっていうより、ただ騒ぎたかっただけじゃない?みんな」
「総司!」


そう私の思考を読んだかのような言葉で私の隣に座った総司。
その顔はやけにキラキラしていた。


「…何かやったのか?」
「土方さんの飲み物、ジュースからお酒にすり替えたんだ」
「………」


その言葉に思わず土方さんに目を向けると…。
こうね、グイッといった瞬間だった訳で。


「だ、誰だ飲み物変えたやつー!!」


そういつもの形相で怒り出した。


「ナイス、総司」
「ありがとう」



〜・〜・〜



思い思いにわいわいと騒いだ私達は、今は良い感じにぐだぐだしていた。
あれからサンタの格好をした近藤さんが、皆にプレゼントをくれたり、左之さんの腹踊りが始まったり、山南さんがひたすらトマトジュースらしきものを飲んでいる理由を皆で考えたり。
正直、やりたい放題である。


「いつまでたっても変わらないな」


騒いでる皆から一歩離れたところから、私は呟く。
その時、誰かにトントンと肩を叩かれた。


「真尋」
「総司?」


総司は私の耳元で言う。


「今から一瞬抜け出さない?」
「今から?」


うん、と頷いた総司から視線を外し、周りを見る。
各々飲み食いしている今は別に抜けても問題なさそうだけど…。


「何で?」
「内緒。来たら分かるよ」


そう楽しそうに笑う総司。
これは何を言っても仕方ないときの顔。
私はふう、とため息を吐きながら教室を出る総司に続いた。







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