突然だけど、僕の彼女について語りたいと思う。
僕の彼女――高崎真尋。
一昨年から共学になった薄桜学園の二年生唯一の女の子。
つまり、薄桜学園初めての女の子。
僕とは幼い頃からの付き合いで、片時も離れず過ごしてきた子だ。
そんな彼女と恋人になるのはごく自然なことで。
高校を卒業したら…僕のお嫁さんに、とか考えてるのはここだけの話だ。
まあそれは置いといて。
真尋のどこが好きかと聞かれれば、全部だと即答できる。
今ここでひとつひとつ細かく教えてあげてもいいけれど、それはまたの機会に。
だって、一日じゃ足りないからね。
だから今日はほんの一部を、語りたいと思う。
「総司!!」
「!」
僕の名前を呼ぶ声で我に返れば、目の前には呆れたような顔の真尋。
「あれ、どうしたの?」
「どうしたのってなぁ…お前が何度呼んでも答えないからだろ〜」
一体何考えてたんだ?と苦笑いを見せる真尋に、僕は正直に答える。
「真尋のこと考えてた」
「…………」
僕の言葉に真尋は目を丸くし、すぐに――
「お前が言うとなんか危ない人みたいだ」
そう言いながらわざとらしく身を震わせた。
「ちょっと、何それ」
「あはは、ごめんごめん。でもほんとに思ったんだって!」
笑いすぎて目尻に溜まった涙を掬う真尋に、僕は「心外だなぁ」と口を尖らす。
「拗ねない拗ねない」と意地悪く口角をあげる真尋は皆がよく言う、僕と「そっくり」の顔だ。
「おいお前らー!早く来いよ!!」
「あ、そうだった。今行くー」
少し前の方から、平助の声がする。
どうやら待たせてしまっていたらしい。
僕らは足早に彼の元に歩みを進めた。
――僕らは今日、学校の近くにある島原女子高校の文化祭に来ている。
僕と真尋、平助と千鶴ちゃんの四人で。
どうしてかっていうと。
「みんな!!待ってたわよ!」
「お千ちゃん!」
「遅くなってごめんな、千姫」
ここに通う、真尋や千鶴ちゃんと仲が良い千姫が、僕たちを招待してくれたからだ。
女子高の文化祭なんて滅多に行けるものじゃないと真尋は今日をとても楽しみにしていた。
…僕としてはちょっと複雑な理由なんだけどね。
「じゃあ、案内するわね!」
「わーさすが女子高。女の子いっぱい」
「真尋先輩、さっきも言ってましたよそれ…」
そんなことを喋りながら、彼女たちは中へと入っていく。
その後を一歩後ろからついていく僕と平助。
前を行く三人は楽しそうで、真尋もすごく嬉しそうに笑ってるから僕も嬉しいんだけど。
「ねぇ平助」
「なんだ?」
「想像してたのと、違うね」
「…まあな」
ぶっちゃけた話今日は文化祭デートだと思ってた僕たち男組は、何とも言えない敗北感を覚えた。
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