第二十話「川の字」

「ねえ…スナフキン…お願いがあるの」

「ん?なんだい?」

ある日、真剣な表情でミク姫が

スナフキンに言った。

(こんな表情初めて見る。

それになんだか元気がないな…)

心配になったスナフキンは

ミク姫の次の言葉を待ったが

「今夜、この部屋に泊まってくれない?」

「え?」

スナフキンは驚いて目を見開くことになる。

「私最近何故か眠れなくて

昔はそんな夜はお父様とお母様と

川の字みたいになって寝てたけど

もうそんな歳じゃないし…

スナフキンと一緒だったら

きっとぐっすり眠れるかなって」

「気持ちは分かるけれど…」

スナフキンはすっかり困ってしまった。

不自由なミク姫のお願いは聞いてあげたいが

成人した男女が一緒に眠るのは

恋人でもないとダメだろうとスナフキンは思った。

「ダメかな?」

しかし必死にお願いをするミク姫に

「…わかったよ」

とスナフキンは言うしかなかった。


そしてその夜。

もう一度スナフキンはミク姫を訪ねた。

いつも叩く窓もスナフキンは控えめに叩いた。

すると白いワンピースのパジャマを着たミク姫が

いつものように笑顔で出迎えた。

「じゃあ眠れるようなお話をしようね?」

できるだけ優しく話をする

スナフキンの声を聞いて

ミク姫はすぐに眠りに落ちた。

「もう…僕の気持ちも知らないで…」

スナフキンはそう言ったが笑顔で

窓から外に出た。

「おやすみ、ミク姫」

そうささやいてから。

もちろん眠りについていたミク姫には

その声は聞こえなかった。

(よかった…)

声に愛おしさがにじんでいた自覚が

スナフキンにはあったから

安心してテントに戻った。


to be continued


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