第九話「お出かけできたら」

その日もスナフキンは

こっそりとミク姫の部屋に行き

旅の話をミク姫に聞かせた。

熱心に話すスナフキンの話を

うんうんとうなずいきながらミク姫は聞いていた。

この時間が二人は大好きだ。

「…スナフキンがうらやましいわ。

たくさん旅ができて」

スナフキンの話が一区切りすると

ミク姫はため息をついた。

ミク姫の外出は

彼女のお父さんが禁じていた。

自由になりたい…

ミク姫はスナフキンと出会ってから

そう強く思うようになっていた。

「どうして、外に出てはダメなの?」

「一度攫われそうになって…」

スナフキンの何気ない質問に

ミクはうつむいてしまった。

その表情は悲しそうで

過去のトラウマに耐えているように

スナフキンには見えた。

「あ、ごめんね!

変なことを聞いちゃったね」

だからスナフキンは慌てて謝った。

「ううん、大丈夫よ」

今度は笑って首を横に振るミク姫。

「でもたまに考えるの。

スナフキンと一緒にお出かけできたら

楽しいだろうなって…」

「それは嬉しいね」

「え?」

ミク姫は不思議そうだったが

スナフキンは真剣な表情だった。

「君の空想に僕がいるのが嬉しいんだ」

「スナフキン…」

それから二人は出かけられたら

どこに行くか、どんなことをするかを

時間の許す限り話した。

その時間がミク姫の救いになればいい。

そうスナフキンは思った。


to be continued


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