第一話「姫の噂」

スナフキンはムーミン谷を離れて

南の国へやって来た。

それはスナフキンが毎年冬に行く

決まった旅路だった。

「ここはやっぱり温かいな」

街の入り口でスナフキンは

汗ばんだ額をハンカチで拭きながら

そうつぶやいた。

暖かい風がスナフキンを包むように吹いた。

「あんた…旅人かい?」

すると行商人らしき男性が

スナフキンに気軽に話しかけた。

「ああ、そうだよ」

「そうか!

今日はミク姫の誕生日なんだ!

あとでミク姫が挨拶をするらしい。

とっても美人だから

見ておいた方がいいよ」

楽しそうに説明をする行商人は

沢山の色とりどりの果物が入った大きなかごを持って

去って行った。

「ミク姫…」

何故かその名前が気になって

スナフキンは

お城へ行ってみることにした。

(なんだろう?この感じ…)

スナフキンは体験したことがない気持ちを

抱えていた。

ソワソワして落ち着かないが

苦痛や不快ではなかった。


スナフキンがお城にやって来たら

もうミク姫の挨拶は始まっていた。

「すごい人だな…」

スナフキンがそうつぶやくぐらいだった。

「ミク姫様!」

「お誕生日おめでとうございます!」

お城の前はミク姫を見たい人でいっぱいで

スナフキンは少し離れた場所で見ていた。

(あれがミク姫…)

青いノースリーブのドレスに

銀色のティアラをしたミク姫は

暖かい日差しに見守られるように輝いて

みんなに手を振っていた。

嬉しそうに挨拶をするミク姫は

遠目から出も確かに美しいとスナフキンは思った。

そして先程のソワソワした気持ちを

スナフキンはまた感じていた。


to be continued


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